ついのべ まとめ







ついのべまとめ 1     



「愛してる?」いつものように妻が問う。「愛してるよ」ややおざなりに僕が答える。それが二人の日常だった。やがて痩せ細った妻がベッドの上で僕の手をそっと握る。「愛してる?」と変わらず問う妻。かすれて音にならない僕の声。本当に大事なことは、簡単に言葉にはならなかった。
僕は土の中で生まれた。ゆっくりと根を張り、少しずつ顔を出して、太陽に向かって背伸びをし、胸を張っていると寄り道をしてきたミツバチが僕のところにやってきて、ドキドキしているとかつての僕のような種が足元に落ち、それを見届けて、僕はまた土に還った。

2011年12月ついのべでー お題「振り出しに戻る・一巡」
待ち合わせの場所にようやく辿り着いたとき、辺りはひどい吹雪だった。彼女の透き通る白い肌が雪の白に紛れ、艶やかな黒い髪が夜の闇に紛れていた。あの日からずっと、僕は彼女を探している。
「お母さん、お隣のきつねくんが手袋を買ってきたんだって。僕もほしいなあ」「だめよ。人間の町に行くなんて、危ないわ」「でもきつねくん、お店の人にきつねの手を見られたけど無事だったんだよ」「我々たぬきはきつねと違ってギャグ要員なんだから、何をされるかわからないわ」
大きな音に、振り返らねばならぬと感じた。何かに背中を押され、足が震えた。ゆっくりとしか動かない体がもどかしい。目で見る前に、爆発だ、と認識した。焦りが生まれる、刹那、まぶたに鋭い刺激を感じた。――これは。「……夢か」(たぐ:後ろで爆発音がした_俺は驚いて振り返った_を自分流に書く)
十歳の時、自分が普通の人間じゃないって気付いた。だってあたしが持ってる角も、額の目も、手のひらにあるとげも、よく見たら他の皆は持ってないもんね。でももっとよく見たら誰もあたしが普通の人間じゃないなんて気付いていないから、あたしはそのまま普通の人間のフリを続けた。
彼が欲しいと言うから、私は全部を捧げた。お金。カラダ。家。財産。地位。名誉。皮膚。指。目。耳。鼻。内臓も、全て。いつの間にか去っていった彼が最後まで欲しがらなかった、私の心だけが、ここに残った。
友人に金を騙し取られ、病気の妻と幼い子らを養うために必死で働いていた男の耳に、幸運な隣人の噂が舞い込んだ。痛む胸を抑え、彼は使い古した父の形見を川に落とす。「あなたが落としたのはどちらですか」。男は震えながら叫んだ。「金の斧です!金の斧を落としたんです…!」
呆けた老人の家に置かれたドクター・ロボは、老人が道端の死体を拾ってきても何もしない。奇行を止めるのは医者の仕事ではないからだ。蛆が湧いても放っておく。虫も死体も医者には関係ないのだ。老人がヘアドライヤーで大火傷して、やっと動き出した。今月になってからもう3回目だ。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『機械仕掛けの医者を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と家電必須』です。
これは主要死因別の死亡率推移グラフです。2042年から死亡診断書に「自殺」と書かない決まりになったので、ここから「自殺」の数がぐんと減っているように見えます。実際に自殺が減ったわけではありませんよ。ここ十年、死因のトップ3は、窒息、全身打撲、凍死ですよね。
サンタに出会ったのは7歳の頃だった。家にサンタが来ないと嘆く貧しい私に、プレゼントをくれた近所のお兄さん。赤い帽子も白い髭もなかったけど、私にとってはサンタさんだった。その12年後、サンタに貰った最後のプレゼントはプラチナの指輪だった。サンタはもうどこにもいない。
去年くれたファーのコートを脱ぎ、一昨年くれたブランドのバッグを捨てた。「髪を切ったの」と驚く彼に、私は一冊の本を手渡す。「別れましょう」。高価な贈り物で私の心は買えなかったのだと、いつか気付いてくれる日を願っている。最後のクリスマスプレゼントは、「賢者の贈り物」。
マザーグースに涙した王女さまが突如ハンプティダンプティーを弔うと言い出し、国中から様々な卵を集めてお城の塀に並べた。暫くすると1番大きい卵と2番目に大きい卵から突然赤い竜と青い竜が生まれ、ハンプティJr.とダンプティJr.と名づけられて国の守護神になった。
その魔術は大昔に禁じられ、忘れ去られたものだった。だが100年に1人の魔術師と言われた私は、ついにそれを復活させたのだ。魔方陣を描き終えたとき、異界から声がした。「本当に、いいの」何を言う、良いに決まっている。「もう死んでいるあなたが、永遠に彼を縛ろうだなんて」

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『忘れられた魔術を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と台詞で終了』です。
年々日本語が下手になってくる元彼からの年賀状に、月日の流れを思う。国際結婚に反対され、別れてから5年が経った。想いが消えたわけではないが、傷は癒えてくるものだ。「Happy New Year」。心の中で呟いて、今年は年賀状を出さないと、決めた。
茄子の夢が見たくて枕の下に茄子を入れて寝たら潰してしまった。怒った茄子の神様は悪魔と契約して3日で世界を征服した。地球は茄子の支配するエッグ・プラン…プラネッ…プランット…?なんかよくわかんないけどそんな感じになった。と思ったら目が覚めた。
意中のあの娘にあけおメールをしたいが、メールじゃ年明け一番に届かないかもしれん。そこでアパートに直接行くことにした。午前0時、チャイムを押しても反応が無い。よく考えれば、アポなしで来るなんて迷惑だった。諦めて帰ろうとした時、イケメンと連れ立ってる彼女に出くわした。
ヒモにお年玉をやったらそのお金でプレゼントを買って帰ってきた。意地悪のつもりで「『キリストの精髄』、読んだことある?」と聞いたら「あるよ」と言う。「神の愛は無償だって話でしょ」そう言って私を気持ちよくするキスをした。今日は勘弁してやるが、無償じゃないぞ。働け。
元旦だけ実家で過ごして彼女は慌しく戻ってくる。こちらに着くのが夕方なら、その足で初詣に行こうと誘った。「そんな遅くに、わざわざ?」と言うけれど、まんざらでもなさそうだ。雪が境内一面に積もった近所の小さな神社には誰もいない。雪が輝く夜に、二人で静かに手を合わせた。
他の男に惚れた女を想い、何年もその背中を見続けてきた。寂しげな彼女の後ろ姿。女性らしい仕草に綺麗な長い黒髪が揺れる。俺にすればいいのに。俺の方に向け。恋焦がれ、祈り続けて、ついに彼女が振り向いた。「……あれ、こんな顔だったっけ……」
メドゥーサは若い男に恋をして目を閉じた。暗闇の中でも愛しい男の声が、体臭が、はっきりと感じられる。それだけで幸福だった。だがやがて醜い彼女を男が厭うていると気づき、怒り狂って男に自分の目を見せつけた。石化した男を二度と呪いから解かぬため、メドゥーサは涙を捨てた。
勇気が出ない自殺志願者の耳に、13日の金曜日はリア充が皆殺しにされるという噂が舞い込んだ。「死ぬ気になればなんでもできる!」シャイな青年が思い切って路上でナンパをしまくると、美人な年上にOKされた。人生初のオンナの温もりで、青年は自殺のことなどすっかり忘れた。
センターの会場で元同級生に会った。「あれえ、高校辞めたのに、なんでこんなとこいんのお」馬鹿にしたように笑われる。でも私は動じない。こいつらを見返すために必死に勉強してきた。一番いい大学に入ってやるんだ。辛かった日々は私に負けない心を与えた。
試されている。これはただの試験なのだ。私は彼の女性のタイプの傾向と対策を練り、そのように化け、且つそれが計画的なものだと悟られないよう至って自然に見せる努力を惜しまない。時折それは苦痛を伴うが、それをおくびにも出さずに振舞い続けるのが、最終試験。
品質管理部では出荷前のコドモの製品検査をする。僕の仕事はコドモが十分に屈強な精神を持っているか試験すること。顔を殴り、口汚く罵り、餌を与えない。この程度で挫ける心では社会でやっていけない。僕もかつてはこの試験をパスした存在なので、胸は痛まない。
生徒たちの試験はある意味で単調なもので、答えは一つしかない。だが教師の採点作業とはある意味で複雑な試験のようで、点数の変移、答案の書き方、間違えのパターンから、生徒の心境を推測せねばならぬこともある。優等生の白紙の答案を見て僕はため息をついた。
魔術研究所で新たな魔術合成法が考案され、試験合成が行われた。失敗して大爆発になり、関係者は皆解雇された。20年後、新しい研究員たちが同じ合成法を思いつき、また大爆発が起きた。失敗の記録を残さないのでそれが繰り返されていることすら誰も知らない。
去年君がくれた誕生日プレゼントは、人の笑い声に反応して成長するという植物だった。僕らの笑い声を聞いて発芽し、葉を開き、ぐんぐん背を伸ばしていった。君がいなくなり、植物はもう成長しない。僕一人では栄養を与えられないから。まるで笑えないゲーム。つぼみは永遠に開かない。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『笑えるゲームを使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:ホラーと植物必須』です。
あの子をいじめたのはプライドが傷ついたから。学年首位を突然奪われた苦い思い出。酷い目に遭わせたはずなのに、久々に会ったらやけに堂々とした態度。いいわ、その自信、今度こそズタズタにしてやる。点数だけが、客観的に私たちを評価する。
彼女は僕の理想の女性。容姿、性格、価値観や趣味も一緒。こんな女性をずっと探してた。何の綻びもないはずなのに、それが何故か息苦しく感じる。パートナーというのは、予め決めていた合格基準に合っていれば良いというわけでもないらしい。
添付の製品試験成績書には「十分な精神の強さを有する」とあるのに、買ってきたこの子供はすぐ泣き出すし反抗するし、どう考えても不良品だ。返品の連絡をしようとしたら目が会った。胸がチクリ。こんな気持ちにさせるなんて、やっぱり不良品だ。
この程度の問題なんてすぐに解けちゃうから、私にはつまらない。試験の時間はいつも退屈だ。私は教壇で試験監督をしている先生を見つめた。今日もイイ男。そうだ、白紙で出したらどんな反応するかな。今日は私が先生を試験しちゃう日だ。
快楽に我を失った男は狂った様に女を抱き続けた。不貞を責める妻の声を、社会の声を、雑音として封印した。愛しい女の喘ぎ声だけを聞いていれば良い。それだけが夜の静寂に交わるに相応しい。赤ん坊の泣き叫ぶ声が聞こえる?そんなはずはない。快楽に伴う醜い産物など雑音以下だ。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『封印された雑音を使って30分で即興してね。特別ルールは叫び声必須と舞台が夜』です。
「おめでとう」と言ってあなたは微笑む。賞を取ったこの研究は、あなたの発想から生まれ、あなたによって始められたものだったはず。表彰台に上がるべきなのはあなたじゃないのか。臨月を迎えたあなたは、私よりもずっと晴れやかな顔をしている。
先生は地味だけど人の長所を探すのが好きで、私達は一人ひとつずつ賞を貰った。かけっこが得意で賞、暗算が速いで賞、逆上がりができるまで諦めなかったで賞…手作りのメダルは宝物だ。先生が退職する日、私達は「皆を沢山励ましてくれたで賞」をあげた。
マーケティング戦略部に配属され、僕は自社製品をあちこちに売り込んだ。名の無い賞を取り、謎の団体から認可を受けた製品に、カタガキの大好きな日本人は反射的に飛びついて売り上げは伸びた。「最優秀社員賞」なる実の無い賞を貰った日、僕は辞表を書いた。
引きこもりになってから半年が経った。熱血教師が突然カーテンに魔法をかけていき、彼の旅先で見た風景が日替わりで映し出されている。「どうだ、外に出てこんな景色を見てみないか!」「うるさいうるさいうるさい!」カーテンを切り裂いたら、久々のリアルな青空に目が眩んだ。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「カーテン」、熱血作品を創作しましょう。補助要素は「旅」です。
意中の男の心を永遠に自分に向けさせられる薬を手に入れたので、彼が大好きなカレーを作って混ぜ込んだ。「ペッ!なんだこれ、すっげー不味い!母ちゃんのカレーとぜんぜん違う!」
大衆に迎合しないマイノリティこそがクール!そんな流行が生まれた。セクシャルマイノリティがもてはやされ、同性愛者が激増した。しばらくすると異性愛者がマイノリティになったので、そっちが流行りになった。性のトレンドの急激な変動は、やがて人類を滅亡させた。
「それは抱擁という行為だ」と彼は言った。「愛しい者との絆を深めるものだ」長い旅の末にようやく見つけた私以外の知的生命体は、いつも亡くした故郷だけを想っている。違うカタチをしていて、文化も共通しない。だからと言って、我々が慈しみ合うことは永遠にないのだろうか。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「抱擁」、切ない作品を創作しましょう。補助要素は「遠い場所」です。
最後の問題を丁度解き終えたら声をかけられた。「すみません、もう閉店なので…」時計を見ると、閉店時間から15分も経っている。「ごめんなさい!」慌てて立ち上がると、店員さんが微笑んで「いいんですよ。大学入試、土曜日ですよね。頑張って下さい」とキットカットをくれた。
お父さんがかっこいい望遠鏡をかってくれたのでのぞいてみました。おとなりの星には大きなおはながさいています。らいおんをたべています。きりんをたべています。いぬをたべています。だんだん大きくなっていくよ。どんどん大きくなっていくよ。あれ?望遠鏡がなくてもおはなが見え
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『かっこいい望遠鏡を使って30分で即興してね。特別ルールは植物必須と動物必須』です。
会社の駐車場で、秋に東海地方の事業所から出向してきた若い営業マンが途方にくれている。私はニヤリと笑ってスノーブラシを貸してあげる。「これ、雪国では必需品よ」「ありがとうございます!」…という風に始まるロマンスも特に無く、私は一人で車の雪を落としている。寒い。
母の形見のオルゴールは、ねじを巻き直さずとも止まらずに鳴り続ける。その旋律は心地良いが、どこが始まりなのかわからない。穏やかで美しい音色は朝も、昼も、夜も、辛いときも、悲しいときも、幸せなときも、楽しいときも、変わらずただ鳴り続ける。まるで母の愛のように。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「オルゴール」、ゆるい作品を創作しましょう。補助要素は「玄関or入口」です。
「これはペンです」「いいえそれは歯ブラシです」「あれは息子のタケシですか」「いいえあれは孫のタクロウです」「私は学生です」「いいえあなたは無職です」…最近英語を習い始めた祖父は、単語の覚えが悪いのに発音だけはやたら良いので、傍から聞いてると頭のおかしい人みたいだ。
さっき出たばかりの月がもう南にいる。おかしい。「解離性健忘ですね。時間が経っているのに気づかなかったんでしょう」うーん、病気なのか、と思っていると、北に沈みかけていた月が目の前に迫っていた。「僕が自然の摂理に反して動いていた事によく気づいたね!」
携帯を手に取った。しばらくして机に置いた。また携帯を手に取った。やっぱりそのまま机に置いた。あの人の声が聞きたくてしょうがないのにできなくて、待ち受け画面を見ていると胸がきゅーっとなる、そんな時間。(タグ:夜という文字を使わずに夜が来たを文学的に表現してみろ)
電力会社を個人で選択できる時代。自由競争だ。「不完全な発電所です。料金、エコ、サービス、どれも一番ではありません。だからこそ努力を続けます」…誠実そうに見える宣伝文句に客が押し寄せ、一番の契約数になった。しばらくすると社員の過労死が相次いでニュースになり、潰れた。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『不完全な発電所を使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:ファンタジーと死体必須』です。
朝起きて洞穴から飛び出すと、一面の雪の中に黄色い塊が見えた。春が近づくと咲く花だった。「蕾は食べられるけど、花はだめよ」死んだ母から何度も聞かされた言葉。悴む手でかき集めた。「きれい」毒花を抱えて戻ると、呆けた姉が笑う。美しい顔で。私は泣きながらその場に崩れた。
指を舐められると身体に火がつく。最初の男の癖だったからだ。そんな事を知らない彼は夢中で私を貪る。昼とは違う顔だと悦びながら。もうあの男の顔も名前も忘れたのに、身体だけがあの頃をひたすら追い求めている。快楽に意識を手放す刹那に、誰を想うのか自分ですら解らない。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧へのお題は『さざなみが湧き起こる・余裕は夜の向こう側・思いの中に囚われる』です。
彼が留守の間の暇つぶしに、棚にあった本を手に取った。陳腐な恋愛小説。ふーん、こういう話がお好み? ヒロインはどこか元カノに似ている気がする。略奪してやった時、さめざめと泣いていた。彼女を捨てて私を選んだんだから、この本も要らないよね? 私はそれをゴミ箱に放った。
気に入らないのは媚を売ろうとする所だった。ずっと新人に辛く当たってきた。派閥闘争の末に子会社への出向が決まった日、一人でいる彼女の元へ来て新人は泣いた。「先輩みたいになりたくて憧れてて、でもどうしたらいいか解らなかったんです」その日初めて、彼女は新人へ心を開いた。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」のオチを代筆します。「彼女は新人へ心を開いた」
足の裏から大地の反発を感じる。腿を上げる動作の単調な反復。息が上がる。苦しいと思うたびに、小刻みに自分の中で目標を作ってそこへ全力で向かう。逃げているのだ、何かから。終わりはない。(タグ:走という文字を使わずに走るを文学的に表現してみろ)
私はブランケット職人。お客様が用意した材料で暖かいブランケットを作ります。今回のお客様は彼への愛を材料として持ってきました。私は尽きない愛でせっせと編み込んでいます。でももうずっと引き取りに来ないので、いくつも作ったブランケットで部屋がいっぱいになりそうです。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「ブランケット」、かなしい作品を創作しましょう。補助要素は「部屋」です。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は「鍋」というお題で、5個のストーリーの違うTwitter小説を書きます!
「うー、寒い寒い、お、今日は鍋か」「ええ、豚しゃぶよ」「美味そうだなあ」「ねえあなた、経理の田中さんて、可愛らしい方ね」「え?!な、なんで?」「今日、お会いしたの。どんな子かなって前から思ってたけど、ふくよかで、子豚ちゃんみたいね」久々に妻の満面の笑みを見た。
夏に遊び呆けていたキリギリスは深く反省し、恥を忍んでアリの家にやってきました。「どうか食べ物を少し分けてください…」「誰がお前なんかにやるかバーカ!」追い出されたキリギリスはアリの家の前で餓死してしまいました。「今日はキリギリス鍋よー」「わーい、ごちそうだ!」
鍋職人の俺の元に国のお偉いさんがやってきた。「沸騰しなくてもぐつぐつ言う鍋を頼む」いやいや、そんな無茶があるもんか!何食わぬ顔で普通の鍋を渡した。「盟神探湯に使うんだ。熱湯に手を突っ込むなんて酷いからね。本当に大丈夫かまず君の手で試したい」おいちょっと待てやめろ!
「なあ、この畑は鍋屋のチェーン店と専属契約してるんだって」なんだと!俺はチープな鍋の具になる運命だっていうのか。高級料亭の皿に盛られる俺の夢はどうなる!俺は一人で畑を飛び出して旅に出た。「あんれま、なんでこんな所に白菜が落ちてるんだっぺな」俺は臭い糠床に沈んだ。
「ミルクパンて持ってない?」「え?わかった、今すぐ買ってくる!」彼は家を飛び出した。こんな深夜にどこへ…?と思った数分後、彼はコンビニで買ったミルク味のデニッシュを抱えて戻ってきた。勘違いに気付いた彼が気恥ずかしそうに笑うので、牛乳をレンジでチンして二人で食べた。
荒廃した世界の隅っこで農夫はひたすら畑を耕していた。あの戦争で笑顔をなくした子供らを食べ物で幸せにしてやりたいのだと。そう言う彼の眉間にはずっと皺が寄っていた。俺は思う。笑顔を失くした男が、他人を笑顔になどできるだろうか?だからまず、俺は農夫へ「笑って」と言った。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」のオチを代筆します。「俺は農夫へ「笑って」と言った」
真夜中に一人で泣いていると、流れ星の精がやってきた。「どうして泣いているの?」「会社でセクハラされてる…。あんなクソオヤジ、キンタマ潰れちゃえばいいのに…」「合点承知のすけ!」その後暫くして会社は潰れた。セクハラオヤジのタマがどうなったのかは知らない。
金魚さんが独りで泣いています。金魚さん金魚さん、泣かないで。雪がしんしんと降りました。私がお友達を探してあげるよ。雪さん雪さん、どうやって探すと言うの?金魚さん金魚さん、もう少しだけ待っててね。春が来て、沢山の雪が一面の湖になった頃、金魚さんは仲間に出会えました。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「雪」、やさしい作品を創作しましょう。補助要素は「ひとりぽっち」、季節はとにかく冬です冬。
「あんれ、雨さ降って来ただー」「ちょっとw碧さんwwどこ出身?ww方言マジウケルしww」お国言葉を哂われ傷ついた私は話すことに恐怖を感じ、貝になった。穴があったのでとりあえず入った。「とったどー!」そしてある日潮干狩りに来た子供に発掘された。
「意地悪な姉2」だって悩んでいるのでは。美しい義妹への嫉妬、継父との確執…そんな風に想像を膨らませて挑んだお遊戯会。30年が経ち、あれは間違いだったと私は気付いた。介護に疲れた妹の頬を暴言と共に叩く。意地悪な姉に心など無い。早くこんな姉を捨てて幸せになりなさい。
目の前の生物はパンダと名乗った。「どう見てもパンダじゃないだろ」「でも俺はパンダなんだ」否定を続けると遂にそいつは涙を流した。…遺伝子汚染で多くの種が絶滅するか異形になってしまった今、私達が何者だろうと孤独である事は皆同じだ…私はパンダへ「すまない」と言った。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」のオチを代筆します。「私はパンダへ「すまない」と言った」
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は「食器」というお題で、5個のストーリーの違うTwitter小説を書きます!
彼が特許関係のニュースを解説してくれたので「頭良いんだね」と言うと「悪くはないよ」と言われた。お気に入りのグラスが欠けたら彼がバーナーで割れ口を丸くしてくれた。「不恰好になったね」と言うので「悪くはないよ」と言った。二人の歴史が刻まれたグラスの淵。悪くはない。
ミリエル司教に憧れて、お金を貯めて買った銀の食器を毎日磨いていた。そして遂にその日が来た。「燭台ごと差し上げますよ」泥棒は黙ってそれを持ち去った。・ ・ ・ 翌日、強盗殺人のニュースが流れた。すぐ近所だなあ。『現場には銀のスプーンが落ちており、警察は犯人の遺留品と見て…』
大好きなお兄さんが教えてくれた遊び。グラスに水を張り、濡れた指で触れる。これはドの音。これはレの音。寂れた私の家が音楽で溢れた。ミの音。ファの音。今日はお兄さんの結婚式。ソラの音。花嫁さんがいない?残念ね、せっかくの晴れの日なのに。私はグラスに触れる。シの音。
確かに俺は安いプラスチック製のスプーンだ。だがスプーンというのは食べ物をすくうための物じゃないのか。何故俺は薄暗い研究室で謎の液体に浮いた異物を拾うのに使われている。愚痴っているとビーカーが俺に語りかけた。「お前のここでの活躍は、将来多くの子供をすくうことになる」
子供の頃。豆を持って家中を回っていると、もう使っていない蔵に鬼がいた。豆を投げつけようとすると泣き出した。「俺は鬼だが悪い事はしてない。酷いよ…」可哀想になったので逃してやった。だが彼は鬼ではなくただの泥棒だった。それ以来私は心を鬼にして全ての人間を疑っている。
恵方巻きなんてやらないよ、と言うと、ミーハーな妻は「季節感のない人ね」と怒る。豆まきは百歩譲るとして、恵方巻きなんてつい最近の流行で、元々はこの地方の習慣ではないはず。不機嫌なまま帰ると、妻が酢飯を作っていた。「ぼーっと見てないで手伝ってよ!」全く、仕方ないなあ。
カエルは冷蔵庫を開けた。空っぽだ。妻はもうずっと寝ている。隣人もその隣人も皆寝ている。自分だけ先に寝るのが怖くて、自分だけ目覚めるのが遅かったらと怖くて、カエルはとうとう冬眠できなかったのだ。空腹と孤独に震える。カエルは熟睡する妻の指を口に含んだ。少しだけ、甘い。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「カエルは冷蔵庫を開けた」
原因不明の突然死として処理された。それ以来昼下がりは家にいられない。疲れていた。寝かしつけた我が子の隣で気が緩んだ次の瞬間、冷たくなっていた。「おばさん、なんで泣いてるの?」優しいのね。生きていればこの少年ぐらいだろうか。泣いてなどいないわ。そんな権利は無いから。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧へのお題は『温もりが消えていく・泣けない死神・午睡の憂鬱』です。
「兄貴、なんかへんてこな機械がこっちに飛んできてますぜ」「まぁた地球のやつらだな。あれじゃタッチダウンできねえよ」「可哀想ですね。どうします?」「仕方ねえ。送り返してやるか。手土産持たせてやるから二度と無茶すんじゃねえぞ」・ ・ ・「はやぶさ帰還!」「わー!」
タマはスイッチを入れた。薄暗い小部屋が徐々に明るくなり、熱気が篭って来る。「お、こいつ、コタツの点け方覚えちまったか。いいご身分だな、全く」そう言うとご主人も中に入ってくる。やがて聞こえる寝息の音。たまには忙しい人間もスイッチ切らないと。さて、散歩にでも行くかね。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「タマはスイッチを入れた」
長年の病苦から解放された少女はここ数年で一番穏やかな顔をしていた。「辛かったね、よく頑張ったね」夫婦が眠る娘を抱きしめる。「もう少し、パパとママを見ててもいい?」突然声をかけられた鬼は振り向いた。「親不孝者は地獄行きなんでしょ?」鬼は躊躇いながらも、少女に頷いた。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『憂鬱な鬼を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須とNGジャンル:SF』です。
その鳥は低所恐怖症になった。進化の末に翼を得た鳥類が、地に足を着けるなどという下等な行為はできないと、ひたすらに空を飛び続けた。そしてあっと言う間に力尽きて、息絶えた。孤独な鳥は死んでようやく地にたどり着いた。
義姉はケシを育てている。カタギの作物よりは割が良いが、足を悪くした僕を養うにはそれでも苦しい。「僕の事はもう良いよ姉さん。外国で新しい生活でも始めなよ」義姉は黙って首を振った。その夜、アヘンで久々に足の痛みを忘れた僕を、義姉は兄の名を呼びながら何度も抱いた。
ケシ畑の放棄を暫定政府が訴えるのは今月に入って3度目。私は断固拒否した。奴らのせいで夫は死んだのだ。私が正気を保てるのは戦地から戻った義弟のおかげだった。なのにどうして突然出て行くと言い出したのか。・ ・ ・傷いたケシの実から白い汁が溢れ出す。その後の事は覚えていない。
「わが国はこれまで多くの異界人を召喚してきましたが、特にニホン出身の勇者は多い。ジュウドウで魔王を倒したヤエキチ、ケンドーの達人コタロウ…」「いや俺帰宅部だし武道とかはちょっと」「キタクブ!」「キタクブとは?!」面倒な事になったなあと瑠伊(るい)はため息をついた。
今夜、不要物を焼却する焚き火大会が催される。私は机の奥から手紙を取り出した。前のひとが忘れられない先輩に、渡せなかった、手紙。焚火には先輩も来ていた。「元カノとの思い出を持ってきた」と言って見つめられる。晴れ渡った冬の星空の下、燃やすつもりだった手紙を握り締めた。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「焚火」、ドキドキする作品を創作しましょう。補助要素は「晴れ」、季節はとにかく冬です冬。
僕は恋愛小説家。人気の理由はハッピーエンド至上主義であること。女心を掴む恋愛テクニックも数知れず。同棲中の恋人とも順調だった。だけどここ3日連絡が取れない。幸せそうに見えたんだけどな。このままじゃハッピーエンドにならないし、話は3日前で終わったことにしておこう。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は「……」というお題で、5個のストーリーの違うTwitter小説を書きます!
校正の仕事をしている彼は、私との会話中にも細かく突っ込んでくる。「そうさつされた」「そうさい、ね」「アボガド食べたい」「アボカドだよ」「確信犯じゃん」「意味間違ってる」うんざりして「別れたいんだけど・・・」とメールしたら、「いいけど、三点リーダーは2倍で使ってね」
「『……』に込められた登場人物の気持ちを答えよって、こんな設問おかしいです。言葉にしたくないから言葉になってないのに、読者がそれを言語化しなきゃならないなんて」「屁理屈を言うんじゃない!」「……」「なんだその目は」「今の『……』に込められた私の気持ちを答えよ」
π=3.14159…… 1/3=0.33333…… 嵐の日は会社まで迎えに行き、落ち込んでたら食事を奢り、転職したいと言うからずっと相談に乗っていたのにある日突然「結婚するからもう良いんだ!」とにこやかに言われたときの気持ち…… 世の中、割り切れない事が多すぎる。
「早く支度なさい、お母さん忙しいんだから!」苛立ち紛れに怒鳴ると、むっつり顔の息子が突然お気に入りの絵本を床に叩きつけ、そこから黒い玉のような物が散らばった。絵本の主人公の「……」という台詞が飛び出したのだ。悲しげな音がゴロゴロと鳴る。息子は目に涙を溜めていた。
私は恋愛小説家。人気の秘密はリアリティを追求していること。編集者から「老いらくの恋」というテーマを依頼されたので、老夫婦の観察に町へ来た。お、あのテーブルの夫婦は雰囲気が良いな。「……」「………」「……」会話無しに空気を共有できるって素敵だけど、若い人に解るかな。
ヴァレンタイン星人は宇宙旅行の途中だった。燃料切れで近場の星に不時着する。「ギブミーチョコレート!」乗り物を追いかける子供達を真似して紛れ込むと、甘くて美味しく栄養価の高い食べ物に出会った。これは良い!ヴァレンタイン星人は地球を支配しヴァレンタイン・デーを作った。
昔々ある所にイケメンがいました。女の子から誕生日に手作りチョコを貰いましたが、ストーブの上に放置して融かしてしまいました。「私をこんな醜い姿にさせて…許さない!」チョコレートお化けは地球を滅亡寸前まで追い込みました。以来2月14日はチョコお化けの鎮魂を祈る日。
公園に一人でいると、幼馴染がやってきた。「好きな子からチョコ貰えなくて落ち込んでんだ?」「うっせーな、どーせ…熱ぃ?!」「ホットチョコレート。少しは元気出しな」そう言って彼女は走り去る。「お返し期待してるぞ!」甘くてしょっぱくて、こんなに熱いチョコは初めてだった。
深夜0時、チョコ達は作戦会議を始めた。「あの娘シャイだし、渡せずじまいになりそうね」「えー!私達食べてもらえないの?」「それは困るわね」翌日チョコ達は箱の中で暴れまくり、箱ごと机から飛び出して落ちた。「あ!」「ん?」彼がそれを拾う。「これ、俺に?」「う、うん…」
あの人を含めたクラス中の人が私を嫌っているのは知っていた。それでも義理だと言えば手作りを受け取ってくれた。この儀式も9年目の今日で終わりにする。「本命だから」と言って差し出すと、彼は露骨に苦い顔をした。私の事が嫌いなのは、最初から知っていた。
学生の頃、絵が得意だった僕は好きな女の子に何か描いてとせがまれ、唯一知っていた彼女の憧れを描いてあげた。十年後。「ああ、あの絵、まだ持ってるよ。よく出来てたよね」「え、本当に?そんなにあの先輩のこと好きだったの」「違うよ。好きな人から貰った絵だから大事にしてたの」
この新人とはソリが合わない。仕事の仕方が乱暴でいい加減だし…ああ、また!そんな事したら…ほら、エラーじゃない。でもこの子が来てからオトコマエのあの人がよく私に会いに来てくれるのは、ちょっと嬉しい。・ ・ ・「プランジャー劣化してますねー交換しておきますー」「すみません…」
夕日が美しかった。隣にいた彼がそれを必死にスケッチしていた。その後画家として大成した彼は美しい絵を沢山描いたが、あの日に彼が慌てて描き写した夕日より美しい絵は一枚も無かった。別れを告げた夜は星空が綺麗だった。隣で彼が黙って見上げていた。美しい空を彼はもう描かない。
最近父は異動があって新しい部署の偉い人になったらしい。バレンタインに持って帰るチョコレートの数が今までより増えている。「義理チョコ、お返しが大変だねえ」「来月、一緒にお返し選んでくれよ」久々の父とのデートの約束だ。
極秘任務を任されたのは、僕がパイロットとして優秀だからではない。静かな二人旅。ある星に近づいた時、僕の胸はざわついた。依頼主の女性が問う。「判ったの」「いや、まだ…」「正直に言って」僕には小さい頃から霊感がある。判ってしまった。あの星に、彼女の婚約者は眠っている。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『名もなきパイロットを使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と特殊能力必須』です。
彼女が出て行って2日が経った。お互い納得しての別れだったが、急に広くなった部屋に寂しさが募る。PCを開いた。そういえば学生時代の元カノは今何してるんだろう。ブログを検索してみた。「男って失恋すると何故か昔の女に連絡取ったりするよねー」うわ、なんだこのタイミング…
出会った時からいずれ離ればなれになるのが判っていた。二人で思い出を蜂蜜に漬け込む作業を1年続けた。熟成させると、とびきり甘いお酒になった。こんなに寒い夜はお湯割を飲むと、とても身体が温まる。南国にいる彼には必要ないだろうから私が一人占め。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「蜂蜜」、ほのぼのした作品を創作しましょう。補助要素は「想い出」、季節はとにかく冬です冬。
子供の頃、親戚のお姉さんが折り紙で羽ばたく鶴を作ってくれた。尻尾を引っ張るとパタパタと羽を動かし窓から空へ飛び立つ。大人になってから記憶を頼りに折ってみるが何故か飛ばない。おかしいな、お姉さんのは飛んだのに。母が不思議そうに言う。「うちの親戚にそんな人はいないよ」





Copyright(C)2012 MIDORI All rights reserved. designed by flower&clover
inserted by FC2 system