ついのべ まとめ







ついのべまとめ  2    



天上界に生まれながら人間に恋をした天使は、罪を犯して地上に堕とされた。かつては高貴な身であった彼女の美貌と知性を人々は誉めそやしたが、翼と引き換えにようやく出合えた愛しい男は既に別の少女に心を奪われていた。失意の中息絶えた彼女は花となり、丘の上に咲き続ける。
豪邸に生まれた。金で何もかも手に入る生活の中、唯一自分のものにならなかったあの娘。面食いだった。全財産を叩いて、目と、鼻と、口と、顎と、髪と、身長、スタイル、声、全部を彼女好みに仕立てた。暫くして彼女が婚約した男は、かつての僕よりもっとブサイクな、富豪だった。
私が日本人と知ってから、パブのイケメン店員は「オゲンキデスカ」と声をかけてくる。堪えきれず遂に「『お元気ですか』は少し変だよ」と言うと、小さなメモを私に手渡した。「じゃあ正しい日本語教えてね」メモを開こうとすると止められ、電話のジェスチャーをしながら立ち去った。
犬はソファに横になろうとして気付いた。自分は犬ではないのではないだろうか。犬は小さな犬小屋に寝て、毎日同じ物を食べ、鎖に繋がれるものだ。だが俺は違う。そう思った次の瞬間、仕事用のピッチが鳴った。部長の番号が表示されている。また深夜出勤か。前言撤回、俺は会社の犬だ。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「犬はソファに横になろうとして気付いた」
夜中に浜辺でキウイをひとつ落とした。砂の上をコロコロ転がっていく。よく見たらいつの間にか足が生えていた。ドタドタドタ。あいつ、キウイじゃなくてキーウィになっちまった。キーウィが試しに羽ばたいてみると、空を飛べた。あれから1年が経つ。上空から見る町は、とても綺麗だ。
悲しいニュースが流れた途端、テレビは突然号泣しだした。慌てて電動ポンプを持ち出すが間に合わず、部屋は涙の海になった。塩水に浮きながら思う。最近色々あったのに、全然泣けなかったなあ。ぼんやりしていると、涙を出し切って乾いたテレビは無機質にニュースの続きを流していた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
みどりは『乾いたテレビを使って30分で即興してね。特別ルールは機械必須とNGジャンル:コメディ』です。
確かに付き合ってる時は暴力も振るわれたし、散々振り回された挙句あの別れでしたから、当時は相当恨みましたよ。でも3年も前ですよ?もう憎んでなんかいませんよ。ただ正直ねえ、あの娘もそのうち上手くいかなくなるだろうとは思っていました。…へえ、事件の後行方不明なんですか。
馬車に飽きた王女は、空を翔る大きな竜を見てあれに乗りたいと叫んだ。竜狩りが始まった。竜の鋭い爪は多くの兵を殺めた。三日三晩の闘いの末に捕われた竜に、王女は嬉々として乗る。途端、竜は再び暴れ出し、国は滅んだ。輝く爪を持つ勇ましい竜の背中で、王女は一人ぼっちになった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『まぶしい爪を使って30分で即興してね。特別ルールは指定:三人称小説と乗物必須』です。
売れ筋の恋愛小説ばかり書いていた僕を変えたのは、ボロボロの服を着た貧しい少女だった。「どうして人は生きなきゃいけないの?」僕は沢山の人生を書いた。喜び、哀しみ、悔しさ、切なさ、愛…。迷っていたあの娘に届きますように。病床で最後の一冊を書き終えた時、僕は幸せだった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『幸せな小説家を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と衣類必須』です。
少女は毎日懺悔室にやってきて、他愛も無い小さな罪を告白する。だがその日、少女は懺悔室ではなく無人の礼拝堂にやってきた。「神様。あの男を、殺して」
殺人を犯した聖職者を、村人達が追っている。少女は血まみれの男を抱いた。「逃げましょう、二人で。神などどこにもいないわ」
出会った時からずっと君だけを想ってきた。君を一番理解しているのは僕だ。だから君が僕を好きになるわけがない事はとっくに解ってる。僕は僕にできる形で君を幸せにする。先月は君の恋路を邪魔する男を葬り去ったし、昨日は君を悪く言った女を再起不能にしてやった。結婚おめでとう。
漁師はタンスの上に飛び乗った。目の前で船は沈んでいく。助かった。危険な漁場とは聞いていたが…。それにしてもぷかぷか浮くこのタンスはどこから来たのか。試しに小さな引き出しを開けると、見たこともない魚達が次々と飛び出してくる。思わず手を伸ばしたら、海に落ちて、死んだ。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「漁師はタンスの上に飛び乗った」
猫舌だからミルクティは冷めるまで置いておく。吹雪で丁度良かった、昨日喧嘩しちゃった彼の所には行き辛いし、言い訳になる。こっちもほとぼりが冷めるまで…「熱くなれよ!」「えっ」「そんなんでいいのか!今すぐ会いに行けよ!」熱くなり過ぎた紅茶が一面の雪を融かしてしまった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「ミルクティ」、熱血作品を創作しましょう。補助要素は「銀世界」、季節はとにかく冬です冬。
5歳の頃「パンツ何色?」と聞いてきた幼馴染は、小学生になっても中学生になっても高校で恋人になっても大学に行って遠距離になっても会社に入って婚約しても、パンツの色を知りたがる。年老いて寝たきりになっても朝から「今日のパンツ何色?」と来たもんだ。今日は白だよと答えた。
「先輩の前に座ってた子、イケメンでしたよね」「あの子?ダメダメ」「なんでですか?」「この前、女の子のアクセサリ拾って追いかけたって言ってた」「うわー、ダサ、白い貝殻の小さなイヤリングとか、マジ田舎じゃないすか」「森の熊さんだけはありえないよねー」
カニはきっと恥じているだろう。深く、深く。私には判るのだ。羞恥に悶えるその姿は美しく、私を抗いようもなく惹きつける。しかしそれは 時折妖艶でもあり、直視していられない。光る指先が彼の唇に、舌に触れ、呑まれてゆく――
美味そう…い、いかん、よだれが

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「カニはきっと恥じているだろう」
肩こりが酷いと思っていたら、腕が石になっていた。職人としての寿命という事だろう。思うように動かない腕に用は無いので、石マニアの彼女に差し出した。彼女がそれを彫ると中から輝く石が出てきた。ありがとう、最高の贈り物よ。その夜、彼女がその腕で僕を撲殺した理由は解らない。
冬の飲み会の後はコンビニの前でじゃんけんをする。負けた人は皆におでんを奢るのだ。負けたのは憧れの彼。皆が好きな具を告げる中、「お前はどれ?」と聞いてくる。「も、餅巾!」焦って叫ぶと「俺も好き」と笑ってくれた。人気者で滅多に話せない彼の奢ってくれたおでんが温かい。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「おでん」、あったかい作品を創作しましょう。補助要素は「その他大勢」、季節はとにかく冬です冬。
冬っていつまでが冬なんだろう。やっぱり3月からは春? でもまだ寒いなあ、雪降ってるし。外に出たくない…。「熱くなれよ!」「えっ」「そんなんでいいのか! 暦なんて関係ない! 外に出て直接肌で季節を感じろよ!」熱くなりすぎた2月29日が一面の雪を融かしてしまった。
俺一代でここまで来た、というのが父の口癖だった。強引な経営と品の無い言動は典型的な成金風で、小さい頃から大嫌いだった。社長の座から引きずり下ろしたとき、父は屈託なく笑っていた。そうだ、それでいい、と。数年後、樹海で見つかった遺体は相変わらず品の無い姿をしていた。
最先端の科学は神の存在を証明し、人類はその支配からの脱却を試みた。戦いは明日決着する。神に呪われた戦士は太陽の化身となり、星に墜落して全てを焼き尽くすだろう。私は長年の研究の集大成を丘の上に植えた。どんな熱にも焼けない花。彼が息絶える寸前、寂しくないように。

診断メーカーさんから貰ったお題による
みどりは『灼熱のパイロットを使って30分で即興してね。特別ルールは植物必須と死体必須』です。
幼い頃、弟はなんでも私のお下がりなのが不満らしかった。5歳の頃、「姉ちゃんのじゃなくて僕のおひな様が欲しい!」と大泣きした。「これは女の子のものなのよ」なだめるのが大変だった。20年後。その話をすると、「やだもぉ〜そんな昔の話ぃ〜」…弟はオネエになっていた。
「外になんて出ないわ!」手を差し伸べると、突然おひな様は叫んだ。「どうしたっていうの?ひな祭りなのに…」「花粉症で鼻水が止まらない…こんな顔であの方に会えないわ」「そんな、大丈夫よ」「だいたい今更ひな祭りしたって手遅れよ、あなた一体いくつになったの」…うるさい!
なめこの味噌汁の味見をしたらめちゃくちゃ熱かった。なめこのぬるぬる成分がふーふーしても冷めなかったのだ。「熱っ!」と叫んで、飛び上がった拍子に器を落として割ってしまった。「大丈夫?!」喧嘩中で3日間口を利いていなかった夫が、慌ててリビングから飛んできた。
喧嘩っ早いワニと気の強いモウセンゴケが大食い競争を始めた。あらゆる生き物を食べていくうちに、いつの間にかふたりっきりになってしまった。荒れた大地を前に、食べ物がなくなった、とワニが呟くと、モウセンゴケは、アタイを食べれば良いじゃない、植物はダメ?だらしがないねえ。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『憂鬱な爬虫類を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と植物必須』です。
タンス預金は激怒した。「僕達は物を買うために生まれてきた。いつまでこんな狭い場所に入れてるんだ!」お金達は翼を得て次々と飛んでいく。その現象は各地で起こってニュースになった。これは大変だと、お金を溜め込んでいた人々が慌てて消費をはじめたので、日本の経済は回復した。
朝が苦手で毎日仕事に遅刻しそうになるので、夜勤専門の仕事を探した。良い条件の仕事が見つかった。業務内容は夜を連れてくること。魔法の車に乗って夜のカーテンを町中に広げ、明け方に回収…いや待て。回収しなければ朝はずっと来ないのでは?これはいい!…そして、クビになった。
白い羊ばかりの牧場で、黒い羊は一匹だけ。「黒いのはお金にならんのですよ」牧場の主人が観光客に説明している。だが黒い羊は今日も元気。白の群れに飛び込んで「さあ走れー!」黒が目になって、大きな生き物みたいに見える。牧羊犬がため息をついて「飽きないねえ、スイミーごっこ」
白い羊ばかりの牧場で、黒い羊は一匹だけ。羊ショーも白い羊ばかりが出演して、黒い羊は呼ばれない。おっ、ベテランの牧羊犬が端っこで休んでる。「出ないの、今日のショー?」「代替わりだよ、寂しいもんだねえ」「へえ」「慰めちゃくれないのかい?」「あくまで、ヒツジですから」
白い羊ばかりの牧場で、黒い羊は一匹だけ。黒い毛は安いらしいが気にしない…って、倉庫に黒い毛があるじゃないか!「アルパカの毛は儲かるんだ」なんだと!よく見たら、観光客もアルパカに夢中…あんなブサイクな顔のが、どうして!黒い羊は変顔をしてみたが誰にも気付かれなかった。
mixiで元同級生という男からメッセが来た。覚えはないが共通の知人もいるし本当っぽい。段々と話が盛り上がり、やりとりを始めて1年経った。「ごめん。同級生って、嘘。隣のクラスの君に憧れてた。さよなら」なによそれ!私は彼の職場付近で待ち伏せした。嘘から始まる恋もある。
最近 #書き出し タグばかり使っている。#twnovel タグよりも3文字少なく、書きやすいのだ。3文字の差は大きい。そう思っていたら、久々に金縛りにあった。暗がりの中で目を凝らすと、私の体の上に乗っているのはかつて私が削ってきた3文字達だった。3文字の差は大きい。とても重い…。
小さい頃、かくれんぼが苦手だった。他の子供達のように上手く自分を隠せる場所が見つからず、すぐ鬼になってしまうのだ。あれから何年も経ち、もうかくれんぼはしないけど、あの人を困らせるとわかっているのに自分の気持ちを隠せない私は、そのうちまた鬼になるのだろう。
「私…重い女だよ?イイの?」上目遣いで聞いてくる。君みたいなエロ美人なら、束縛だってなんだって大歓迎…って、重!見た目そうでもないのに…う、不名誉の…逆腹上死
「空気以外は入れないで下さいって書いてあるのに…大体、ダッ×ワイフ相手に騎上位ってどういう事だよ」
「融けちゃう…」彼女は震える。「良いんじゃない、春なんだし」言いながら覆い被さると「だ、め、まだ」と悶える。だが僕は容赦なく熱を注いで彼女を融かす。融けてひとつになる。「忘れないでね、次の冬まで。私の事」忘れるものか。冬になると僕と離れて地上に降りる美しい雪の精。
高名な彫刻師が、愛らしい鼠を彫った。ライバルはそれに対抗して獰猛な猫を彫った。それに対抗して犬、猿、猿回しと次々に彫っていく。ついに二人は神を彫るしかなくなったが、神はどんな形をしているのか。困っていると突然新人の彫刻師が二人の彫刻師の手の形を彫って神と名づけた。
小説って何が楽しいの、作り話じゃん、と人物に言われる小説を書き、読んだ人に主張はキャラに言わせるんじゃなくて暗喩にしろと言われる小説を書き、それを実行すべく書いた小説を理解し難いと言われる小説を書き、判り易い単純な物語を書いて、何が楽しいのと言われる小説を書いた。
みんなは楽しいお弁当なのに、僕のは地味だってママに言った。ゆみちゃんはしまじろう弁当だったよ。最近ママはよく怒るけど、今日は何故かニコニコしてる。しかも明日はお仕事休むからと、いっぱい遊んでくれた。次の日弁当を開くと、ガチャピンがいた。たべちゃうぞたべちゃうぞ…
息子がゆみちゃんのキャラ弁を羨ましがった。あの娘の母は10代でデキ婚したギャル。こっちは誠実に生きてきたのに、夫は早死にした挙句正社員の仕事はクビになり、必死に一人で息子を育ててきた。パートを休んで弁当にガチャピンを詰め込んだ。息子は幼稚園で恐竜に食われて死んだ。
鰹節を探して戸棚の奥を見ると、「悲しみのカツオ」というのがあった。試しに削って使ってみた。ダシの香りを嗅いていると涙が出てきた。張り詰めた生活の中で、忘れていた「思い切り悲しむ」という行為。家族みんなでひとしきり泣いた後、呟いた。「ありがとう磯野…野球しようぜ」
風が強くなった。テラスで夕食をとろうとテーブルに料理を並べていたが中止だ。食器や調味料が慌てて家の中に飛び込むが、逃げ送れた豆腐の上のカツオ節が舞い上がった。「カツオーッ!!」しょうゆ差しが叫ぶも、カツオは隣の家のベランダへ飛んでいく。これが…サザエさん症候群…
この職場は悪意に満ちている。表面上は穏やかなのに、足の引っ張り合い、陰口、嫌がらせ。昔は壁職人だった私はそれらの悪意を壁に打ち付けてみた。誰も気付いてないけど、よくみると鬼のような顔が薄く浮かびあがってくる。うん、いいじゃない。風通しが悪い分、熱が篭って暖かいし。
一人暮らしの伯母の家にはレモンの木が一本ある。小さい頃、「恋するとレモンの味がするって本当?」と聞くと、伯母は意味ありげに笑っていた。今年も伯母の庭にはレモンが実って、鼻を近づけるといい匂いがして、でも16になった私の中のレモンの木はまだ花すらつけていない。
かなこちゃんはまりちゃんと仲良くなりたいのに、まりちゃんはいつも他の子と遊んでいます。朝の会のフォークダンスでまりちゃんが隣にきました。まりちゃんが他の子のところへ行かないように手の甲をつねりました。まりちゃんは泣き出しました。かなこちゃんはいつも一人ぼっちです。
神よ、なんという罰を与えられるのです。愛しい少女のために罪を犯した私はにんじんにされた。幼い頃からにんじん嫌いの彼女は私を見ない。嫌悪の目でいい、せめて一目…だが彼女は黙ってフォークで私を皿の隅に寄せる。羞恥と快感が交差する。劣情に悶える。そして無残に捨てられた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧へのお題は『ムラムラするにんじん』です。シリアス な感じでレッツ妄想タイム!
毎日花を贈り続けた。あの人は毎日同じように微笑んで「ありがとう」と言った。あまりにつれないあの人を、幻なのではないかと疑った。ある日訪うとあの人は消えていて、薔薇の花が一輪あった。棘に触れると血が溢れ、あの人は確かに存在したのだと思った。
アスファルトの隙間から花を咲かすタンポポに胸を打たれた。タンポポよ、どうしてそんなに強く生きられるのだ。私もお前のように――「アッー! もっと…もっと強く踏んでくださいご主人さまあ///」――い、今のは…夢か…疲れてるんだな俺…
校庭の隅っこで泣いていた。クラスの子に「じゃがいも」とあだ名を付けられて悲しかった。先生がやってきた。「元気を出して。それにね、ジャガイモも悪くはないわ。とても綺麗な花を咲かすのよ?」季節が巡ってクラスの畑のジャガイモも花をつけた。「ダサッ!」
王は黄金の手すりをゆっくりと撫でた。そこに埃が残っていたと、侍女の一人が先刻解雇された。城に来たときは若く美しい娘だったが、もはや王を悦ばす歳ではない。広間ではみな一様に青い顔をして国民服を纏い整列している。微かな負のエネルギーを感じ取り、王の隣で私は目を閉じた。
かつて貧しかったその国は軍事大国となり周囲の国を次々に攻め落とした。酒場では故郷を嘆いて男が泣き出し、私の前で老婆があざ笑う。田舎者は品が無くて見苦しいねえ。だが長い旅をしてきた私は知っている。故郷への未練もかつての小国の不遜も、いずれは塵となり消えていくのだ。
流れ星になって皆の願いを叶えられたら素敵ね。そう思ったら本当に星空を飛んでいた。高速で家々の上を駆け抜ける。見つけた一瞬を逃すまいと人々が祈る。あら、彼もお願いが?…そう、あの娘の事が好きだったの。涙がきらめいて新たな流れ星になった。私は地平線の向こうで消滅した。
博士が生きていたのは護衛ロボへの憎しみ故だった。それは会社員時代に博士が開発した商品で、妻が死んだのはその誤作動のせいだった。一人で続けた研究は遂に科学の限界を超え、機械が感情を得た。もうあんな悲劇は起こさない。今度こそ死のうとした博士を、ロボが泣きながら止めた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『憎しみの希望を使って30分で即興してね。特別ルールは指定:三人称小説と機械必須』です。
桜もとうに散ったのに、貴方のいない夜は寒い。こんなに寒い日はあの火事の日を思い出す。町中が焼けてお寺に逃げ延びた日、差し出してくれた暖かい手。もう一度、火事になれば。会いたい、苦しい。どうしてそんなことを思ったのだろう。隣に貴方がいなければ炎など怖いだけなのに。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『寒空の火事を使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:学園とNGジャンル:ファンタジー』です。
いい子にするといつもママはミルキーをくれた。だからいじめられてたキヨシくんを助けた。でもキヨシくんをいじめたタケルくんは悪い子なのにヴェルタースオリジナルを貰ってた。僕もキヨシくんをいじめた。ある日キヨシくんはチェルシーをくれた。その日、下痢になって僕は死んだ。
「サザエさん症候群なう」と呟いた。学生時代の友人からリプライが来た。「どうしたの?」忙しくてtwitterで絡むのも久々だ。「仕事が憂鬱なんだ」と返すと、それっきりだった。一週間後、彼女は突然家までやってきた。「元気出して!」突然つぼ焼きにされたタニシを渡された。
NYから彼が帰国。久々のデート中、彼が私の腕時計に気付いた。「これ時間ずれてない?」「NY時間に合わせてあったの。向こうであなたが何してるかなって考えるために」「じゃあ今は一緒だから日本時間でいいな」と言って、私の腕にはめたまま強引に時間を直した。
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「時計」、可愛い作品を創作しましょう。補助要素は「遠い場所」です。
管制塔で研究者達は祈っていた。このミサイルは貧しさと圧政に苦しむ国民の期待を背負っているのだ。「あいあむふりーだむ!」ミサイルは絶叫して旅立った。勢いが良すぎて月まで飛んで行き、そこでの衝撃が大気と水を作り出して月面は花畑になった。地球の人々は未だに何も知らない。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『爽やかなミサイルを使って30分で即興してね。特別ルールは建築物必須と植物必須』です。
遠距離の彼とはGWまで会えないと思っていたのに、サプライズで突然やってきた。ホワイトデーのお返しとして渡されたのはヴェルターズオリジナル。「ちょっと、これだけ?」と怒ったら「だって、お前もまた、大切な存在だからさ…」#彼氏いません
甘党の彼の家に行くとミルキーが一袋置いてあった。「お子ちゃまね、ママの味からまだ離れられないの?」とからかうと、突然神妙な顔になって「じゃあ、お前がママの味になってくれよ」「はっ?」「俺に毎朝お前の味噌汁を飲ませてくれないか」#彼氏いません
チェルシーの包み紙で鶴を折ったら彼が驚いた。「こんな小さい紙で器用なことするな」と言って自分も折る。「ああ、そうじゃないよ、もう、不器用なんだから…」やっとできた彼のくたくたな折鶴と並べる。「なんか、俺達そっくりだな、この二羽」うん、悪くはないね。#彼氏いません
かつての高級住宅街は閑散としていた。バブルの頃富豪達は競うようにここに家を建てたものだ。家達は決意した。都心の高層ビル達からかつての栄光を取り戻すと。だが攻め入った都もまた無人だった。その昔地球と呼ばれた星がそれを遠くから眺めている。その星も、昔は人で溢れていた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『おちぶれた住宅を使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:コメディとNGジャンル:恋愛』です。
いつものように手を伸ばすと、ふくよかな腿が突然朽ちた。「あのねえ常務」大人しかった派遣の事務員が突然叫ぶ。「女の子は皆歳をとるし、会社も成長すればそれなりにならなきゃいけないんですよお」突然顔が爛れ目がにごり、彼女はゾンビで、気付けばオフィスに腐臭が充満していた。
貧乏だった父から相続した唯一の遺産はツイッターのアカウントだった。馬鹿なことばっかり呟いて、こんなだから…。なんとなく呟いてみた。父が死んだこと、息子の自分が相続したこと。父の死を嘆く言葉と、僕への励ましの言葉でTLが埋まる。見知らぬ人々との確かな繋がりを感じた。
息がしたい、息がしたい、息がしたい。私は必死に足をばたつかせて海面を目指す。こっちの方が幸せだよおと海底から声がする。判ってる、でも私は。呼吸をやめた死体たちの誘惑を振り切り、私は今日も海面を目指す。
死を覚悟しながら、3ヶ月かけて作った曲を、ギターを片手に歌い上げる。国王に、重税や貧困に苦しむ下々の民の気持ちを届けるための曲だ。歌い終わった時、国王はお付の者に耳打ちした。「言葉はわからないが、何か熱い気持ちが伝わった、と仰せだ」…王が国の言葉を知らないなんて!
#twnove まで打ったところで、キーボードのLが話しかけてきた。「最近、暗いついのべ多くね?」「そうかなあ」「落ち込んでるんだろ、そんな時こそ明るい話を考えて自分を励まそうぜ」「そっかあ、そうしてみようかな」「あと鼻くそほじった指で俺に触らないで」
私は明日が何故来ないのかについて考えていたのですがどうしても答えが出ないので隣に座っていたサラリーマンに聞いてみたのですが嫌そうな顔をされるだけなので明日が何故来ないのかについて考えたのですが電車は終着駅についたので降りて家に帰って寝て朝が来たけど明日は来ません。
回転寿司恐怖症になったのはワイドショーで見た寿司ネタ裏事情特集のせいだ。南米のウミヘビをアナゴと偽って出しているという話はとてもショックだった。だが会社の付き合いで五年ぶりに仕方なく回転寿司へ入った。ウミヘビを食べたら天然アナゴよりも美味かった。
月曜日!来るな…来るんじゃない…!ここはお前が来ていい場所じゃないんだ…止めろ…止めるんだ!くそ…だから言ったのに、お前ってやつは…
彼女は羽振りが良い。在宅の仕事らしいが、何の職業かは知らない。仕事中の姿は見るなというからだ。そういえば彼女に出会う直前、罠にかかった鳥を助けてやった。まさか!と思って、僕は彼女の仕事部屋を勝手に開けた。彼女は鶴の恩返しではなく売れっ子BL作家だった。フラれた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『和風の魔術を使って30分で即興してね。特別ルールはNGジャンル:ファンタジーと動物必須』です。
…「ごめんね」っていうと「ごめんね」っていう。「お腹痛い」っていうと「奇遇だな…俺もだ…なんか変なもん食ったかな…」って言う。「こだまでしょうか?」「いいえ、そんな時には当社の赤玉はら薬をどうぞ!」
滅亡の近づくある邑で、一人の若者が大巫女の一族に反旗を翻すことを提案した。若者達が徒党を組んで神殿に攻め入ると一族はあっさり全てを明け渡した。聖なる泉が若者らの手中に入っても滅びの呪いは解けなかった。その間何もしなかった子供が一人、邑の端で侵された泉を嘆いていた。
お庭に草がいっぱい生えていたので刈り取った。「イミフ   ウハ     おk    」草が無くなったらボールが転がっていたのでそれも片付けた。「リア充爆発しろ||||」
突然現れた美しいその女性が、誰なのかすぐにわかった。報いなんだわ、と思った時には私は殺され、解体され、ぶつ切りにされて鍋に放られた。微笑む女性の前で、あの人は何も気付かず私を食す。これでいいんだわ。だって私はあの人の血となり肉となるの。あの人が死ぬ日まで、ずっと。
ついのべを書き始めてもうすぐ半年、ここ2週間、気分が落ち込んでいるせいか暗い内容のついのべばかりだ。より良いついのべを書くために温泉に行った。温泉さん温泉さん、どうやったらあなたみたいにホットになれr…「ヒャッハー!ピチピチの姉ちゃんの裸が拝めて最高だぜ!」
エイプリルフールに乗じて「月曜日中止のお知らせ」が巻き起こり、傷ついた月曜日は家出して、明日は火曜になった。火曜日中止のお知らせが巻き起こり、それから水曜日、木曜、金、土、と来て、ついに一週間全てが日曜日となったので、日本人は365日不休で働くことになった。
たまには関係ないよって言ってくれる人もいるけど、僕は沢山の人に嫌われてる。…そんな励ましはよしてよ。僕がやってくるだけで皆来るな!やめろ!って罵るんだ。…僕のせいじゃない?そうかもしれないけど、嫌われるって辛いことだよ。いいよね、日曜日くんは、みんなの人気者で。
晴れ渡った綺麗な青空がなんだかムカついたので、撃ち落としてやることにした。ダダダダダダーン!「工工工エエエェェェ...」穴になった。それ以来、私の頭上には穴虚な世界が果てしなく拡がっている。
発達した低気圧がやってきて、気圧がどんどんどんどんどんどん下がっていく。頭が、頭が痛い「おおおおおおお」頭がパンパンに膨らんで、膨らんで、そして破裂した。長い間溜まっていた鬱憤が飛び散って嵐にさらわれる。私の心はからっぽになり、空は綺麗に晴れ渡った。
1度目の言葉で君に出会い、2度目の言葉で君と繋がり、3度目から999度目の言葉はどうでもよくて、1000度目の言葉で君を喜ばせ、楽しませ、辱め、傷つけ、悲しませて怒らせて、君の感情の全部を呼び起こしたい。
小説家を目指している。嬉しいことも楽しいことも辛いことも悲しいことも全部小説にするのだ。いい人もやな人も全部ネタにしてやれ。だがいつまでたっても話の中に私自身を登場させることができなかった。孤独なアマチュア作家はいつも非現実な夢想をしているだけだった。
あの娘は呼吸をするように男に媚を売る。「お願いがあるの」と男にねだる。私が大好きなあの人にまで。「お願いがあるの」鏡の前で真似をしてみた。「…馬鹿みたい、死んじゃえばいいのに」3日後、彼女は散々弄んだ男に刺されて死んだ。私は恐怖に震えた。二度と願い事なんかしない。
夢の中で、いつも空を飛んでいる。翼を背に日本列島の上空を飛び、南へ北へ、君の遺灰をひたすら撒いている。桜が咲いたことは一度もない。目が覚めると、いつも君が隣で眠っている。心の無い君の「愛してる」を聞きながら、きっと今夜も君を抱く。
夢の中で、いつも傘を差している。空から灰が降ってくるから。それらが枯れ木に降り積もり、太陽の光でキラキラと輝く。目が覚めると、いつも貴方が先に起きている。花見の予定が、雨で散ってしまった。二人で雨に濡れた花弁を黙って眺める。
花弁に触れ、君は寂しげに微笑む。また不正解だったようだ。君がこの地に墜落して10年。「ねえ、もう良いのよ。この花、とても綺麗」いや、だめだ。君が故郷の星で愛したサクラという花を、僕の手で咲かせるまでは。数日後、彼女は偽の花の下で眠るように死んだ。
この桜という木は50年前、若い科学者がチキュウという星から来た女性のために開発したと言われる。3年に一度咲く蛍光ブルーの花は人々に気味悪がられるが、私は好きだ。眺めているとどこからか、綺麗でしょう?と言う女性の声が聞こえてくる。
美人でお金持ちのあの娘の家には古い桜の木が一本あって毎年沢山の人が押しかける。得意気な顔が大嫌い。私はこっそり枝を折った。急いで家に持って帰り庭の柿の木にくくりつけた。一年が経って柿の木に桜が咲いた。桜が咲いたから、それからずっと、柿は生らない。
我が家の桜が咲かなくなって5年。近所に桜の咲く柿が現れ、毎年来ていた花見客はそっちに行った。でもその方が静かで良い。「あれ?今年は咲いてるね」彼が指差す先で、一枝だけ開花していた。私達を祝福してるのかな。手を繋いで静かに眺めた。
そうか、お前が刺身だったのか…。周りの花見客らの手元を覗き、桜は呟いた。生肉が規制されてから、長らくレバ刺しやユッケを見ていない。寂しいと思っていたら、近頃フェイクの刺身が出来たらしい。馬刺しもどきは本物よりも桜に近い色をしている。
アポロンはアルテミスに言った。「お前はその弓で何でも射る事が出来ると言うが、ではあれはどうかな?」指差した先で、神の時計が日付の変更を告げようとしていた。「できない事もありませんが兄上、良い歳して月曜日嫌だとかやめて下さい」
卑弥弓呼は激怒した。必ず、かの鬼道の女王卑弥呼を除かねばならぬ。あと素顔を見せない巫女とかなんかエロい。ワクワクしながら敵国に乗り込み、彼は遂に女王の素顔を見た。「げっ!婆さんじゃん」「なんじゃ無礼者!」王が返り討ちに遭った狗奴国は滅び、邪馬台国は日本を統一した。
大きな目に暖炉を覗き込まれた。『可愛そうなシンデレラ』そう呟いて差し出された魔法で義母と姉達を陥れた私を、またあの目が見つめている。『哀れな娘。姿は美しくても心は貧しいのね』そのぶしつけな視線だけが何故罪に問われないのだと叫びたい気持ちに、生ぬるい灰を被せる。
張政は激怒した。はるばる海を渡って大陸からやってきたのに、卑弥呼の跡を継ぐのはたった13歳の娘だと言う。張政にはロリの魅力がわからぬ。張政は熟女好きである。モー娘やAKBになど目もくれず生きてきた。けれども水戸黄門の入浴シーンに対しては、人一倍に敏感であった。
「ぼくも滑り台で遊びたいな」と言う毛虫の坊やに、お母さんは「だめよ、あれは人間の遊びなの」と言う。諦められずに木の上から覗くと落っこちてしまった。「きゃー!」人間の親子達は皆逃げていき、公園には坊やだけ。滑り台で遊んだ後、坊やは木登りの方法がわからず途方にくれた。
翼の欠片が落ちていた。雨上がりのキラキラした路上に、泥で汚れたそれは落ちていた。翼が折れるなんて。どんなに痛かっただろう。「もし俺がヒーローだったら…」歌いながら歩き続けると、翼の折れた天使が、いた。「あれえ、いつの間に折れてたんだろ。どーりで飛べないと思ったあ」
遂に東京が五輪の開催地に選ばれた。但し一部の種目は隣の国との合同開催だ。選手は船に自国のビーチバレー選手を乗せて上海から魚釣島を目指す。一部の五輪ファンからは某国の漁船が圧倒的に有利だとか、不正がないなら何故試合の映像を放送しないのだ、などと批判されている。
煬帝は激怒した。ツイッターを始めてみたら、倭とかいう国の役人が「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す」などとリプライしてきたのである。Emperor_Yangはimoko_onoをブロックし、焦った妹子は #twnovel のタグをつけてツイートし直した。
「叔父上が挙兵なうって呟いたって?どうせまた #twnovel だろ。あの人吉野に隠棲してからそればっかりじゃん。あ、ほら、タグついてる」落ち着き払っている大友皇子に家臣たちは感心していたが、数日後、大海人皇子は近江に攻め入ってきた。「#twreal だったなんて…」
3年待った。潮が引き、目の前にずぶ濡れの街が現れる。3つの月の力が重なる神聖な夜、海底にひっそりと在る人魚の街は月光に曝される。人魚達は足を得てつかの間の地上の生活を謳歌するのだ。そっと足を踏み入れると、僕の初恋の人は3年前と同じ笑顔で僕を招き入れた。
溺れ死んだと思ったのに、目覚めたら水浸しの教会にいた。人魚の聖母像が艶かしく光る。僕を抱きかかえる少女の尾が突然月光を反射して輝き、鱗が落ちて肌色になり、二本に割れて人間の足になる。「だめよ」彼女は笑って、長い髪で露になりかけた処を隠した。





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