ついのべ まとめ







ついのべまとめ      



かつての氷の国は温暖化により時を止めたが、気まぐれにやって来た氷の女王が息を吹きかけると辺りが凍り付いて蘇る。動き出した人々は市場を賑わせパレードを行いご馳走を分け合うのだ。人々が再び眠り始める頃、女王に焦がれる王の心だけが時を止めずにそこに在る。
子供の頃、月に一度母とすき屋に行った。貧しい我が家の唯一の贅沢。カレーが美味しかった。あれから10年。「ねえ、まだ?」彼女が台所を覗く。慌てるなって。「いい匂いがするんだもん」焦らないで、この火加減が味の決め手なんだ。僕は月に一度、大切な彼女に特別なカレーを作る。
#novel10 企画。10文以内、台詞「ねえ、まだ?」を使用する縛り。
「アイスだけに君を愛す!なんちゃって」スーパーカップの放った駄洒落により凍て付くブリザードが発生し、彼女は固まってしまった。シャーベットになった彼女をハーゲンダッツ専用スプーンで食べると爽みたいな舌触りでとても美味。次はジャイアントコーンに乗せてみようかな。
僕は今、最先端の科学が発見した宇宙を動かす歯車の前にいる。「こうやって銀河同士がかみ合って回り、そのエネルギーで我々全ての有機体が生きている。どこか特定の時間を止める事などできぬ」「この歯車動かす仕事に転職したい…」「そうだね、日曜も月曜も関係なく働き詰めだね!」
卒業証書を放り出し君は雪の上を走り出す。融けては冷えた3月の雪は硬く脆い。捕らえた手を引くと、僕らはその中に倒れこんだ。「私達、大人になるのかな」ぽつりと呟く君の膝は幼い頃より白く透き通り、滲む血はずっと鮮やかに見える。「もうなったんじゃない」君は目を閉じた。
森の奥深くにある隠れ里の巫女達は純潔と無心の祈りを神に捧げる運命を誇りにしている。「ねぇ、森の外には何があるの?」そう問うとお姉さまは怖い顔で睨むが、少女の好奇心は収まらない。何度も夢に出る竜が彼女を外の世界に誘おうとしているから。
激流の際で大口を開けるかつての鮭獲り女王を、輪廻を繰り返した鮭達が哂う。老いぼれ熊め、そんな手に二度とかかるものか。ようやく飛び込んで来た間抜けな鮭は口の中で力任せに抵抗した。それを必死に咀嚼しているうちに陽が沈む。目から涙が、口から鱗が零れ、渦に呑まれていった。
「これ欲しがってたろ」小さな子供は大きな子供にエアガンをあげました。大きな子供は、小さな子供のくせに、と思いましたが、小さな子供はお金持ちなのです。試しに撃ってみると小さな子供に当たってしまいました。小さな子供は呻き声をあげましたが、小さな子供はお金持ちなのです。
君のために四つ葉のクローバーを探していたらいつかの花畑に戻ってしまった。気付いた君が駆け寄ってくる。「どこに行ってたの?ずっと探してたんだよ。やっと会えた。これのおかげかな?」笑顔の君の手に四つ葉のクローバーを見つけて、僕は地球の裏側で摘んだ自分のを背中に隠した。
「なんで怒ってるの?…怒ってるよ!そうやってすぐ苛々するのよくないと思う!理由ぐらい教えてよ!」そうだね、私は静かに怒っている。そうやって気難しい友人にやきもきする苦労の絶えない善良な少女ぶっている、君にね。
狭い通路をようやく抜けると、それは大声で泣き出した。生まれてきた目的を果たせずに尽きる運命を嘆いて。泣き声に共鳴した小部屋の壁が血飛沫を飛ばしながら崩れ出す。涙で満たされた空間が歪み、軋む。反対側の通路の先で、目覚めの許しを待つそれの分身が己の運命を思って震えた。
春の温い風を恋の始まりと勘違いした。夏の暑さで頭がぼうっとするのは恋をするのに似ている気がした。秋の紅葉は恋して恥らう姿を映しているのだと思った。冬の一面の雪をゆっくり表面だけ融かしてゆく太陽の熱さはまるで恋だった。恋の女王は一年中忙しい。
玄関は埃まみれだ。客人は勝手口や窓から土足で上がりこんで私の家を踏み荒らすばかりだからだ。私は家中の窓と戸を厳重に閉ざした。ある日玄関の呼び鈴が鳴った。控えめだが何度も鳴るので恐る恐る開けてみた。扉の隙間から太陽の光が差し込んで、ふわりと舞った埃がキラキラ輝いた。

診断メーカーさんから貰ったお題による
みどりさんの本日のお題は「ほこり」、あっさりした作品を創作しましょう。補助要素は「玄関or入口」です。
親の七光りと言われた二世ものまね芸人も、今や自身で確立した新しい笑いでお茶の間のスターだ。但し週に一度訪れる老人ホームでは、子供に人気のあのネタではなく亡き父から伝授された芸を披露する。虫の鳴き真似に老人達が微笑む。懐かしいねえ、虫なんて最近全然見ないからねえ。
ひよこの屋台で君に買われた。可愛がってくれた。休みが終わり、僕をお家に連れて帰ると泣く君を、お母さんが困った顔でなだめた。それからおばあちゃんに育てられた僕は羽根が生え変わり翼が出てきた。「こんなのぴーちゃんじゃない!」3ヶ月ぶりの再会で、君は僕を拒絶して泣いた。
吸血鬼は貧血で倒れた。人に恋して以来必死に禁欲し、やっと漕ぎつけたデート中に。目覚めたら狭い部屋に二人きり。もう、我慢できん!首筋に飛びつくと彼女はニヤリと笑う。「正体を現したわね」まさかのハニートラップ。ヴァンパイヤハンターの蜜のような血を味わいながら、死んだ。
山の頂に独り、生まれ育った。ある朝突然自分が猛烈に孤独であることを思い出したので、麓に下りることにした。大声で叫びながら無人の山道を全力で駆け抜ける。その先には人間がいっぱいいて、私を遠巻きに眺め、何事かをひそひそと囁きあった。私は孤独だった。
ひとつひとつ、羽根を抜くたびに君は震えた。わたしを置いて旅立つなんていうからいけないのよ。丸裸になった君の背中は血だらけで、撫でてやると痛みに悶える。赤みを帯びた肌の香りはほんのり甘く、舌を這わせる度に喘ぐ君の声はもっと甘い。

診断メーカーさんから貰ったお題による
みどりさんの本日のお題は「鳥」、きわどい作品を創作しましょう。補助要素は「旅」です。
ある朝目覚めるとグレゴール・ザムザは巨大な一本の足になっているのに気付いた。立ち上がろうとするも腰に繋がってもいないし支えとなるものも何もないので起き上がれない。一本の足のまま必死にばたついた。
・・・
「足が勝手に動くんですけど…これがむずむず足症候群ってやつですか?」
優しい狼は私に子供でいろと言った。子供のように道草を食っていなさい、と。針で必死に道を縫った。夢中になって、私を嫌う母の怖い顔や祖母の意地悪な仕打ちを忘れたかった。でも針は折れてしまった。祖母の家で彼は血まみれだった。ごめんなさい狼さん、子供ではいられなかったの。
パリのお洒落なカフェでホットサンドになるのが夢だった。ジューシーなソーセージと一緒にパンに挟まれてイケメンの口にダイブ。チープなハンバーガーの具なんかごめんだ。そして、瓶からつまみ出される日がやってきた。
・・・
「これがピクルスかあ…ご飯のおかずには合わなかったなあ」
タイムサービスで買ったえびフライを釣り針にくくりつけて放る。のどかな海を見ていると眠くなる。うとうとしていると釣り糸がピンと張る。勢いよく引くとたいやき君が釣れる。「やったあえびフライ…って衣ばっかりじゃん!」暴れだした所をリリース。残念だったね。
おしおきだ、と居残りを命じられた。放課後の誰もいない教室、温めてもらった先生のミルクを拾った猫の赤ちゃんに舐めさせる。「山田、先生はな、動物を大事にするのは良いことだと思うからな。ただ、勝手に学校を抜け出すな」「…はい」それから二人で、猫が大人になるのを待った。
君は気付いてしまった。カフェオレ様がカフェオレ様じゃない事に。「ミルクが50%じゃない!」ミルクに不純物が混じって49.8%なのだという。君は怒り狂った。そこへ颯爽とあらわれるイケメン、半分ぐらい飲んじゃう。「ほら、半分だよ」イケメン効果で君の怒りは収まった。
彼が歌うと雪が降る。冬の歌はキラキラして美しい。彼が歌うと花が咲く。春の歌は喜びと安らぎ。ねぇ、恋の歌を歌って、とお願いした。私はずっと前から恋に落ちていたのに、彼が歌っても叶う事はない。
この子はきっと綺麗な花を咲かせる。花壇の隅のちょっと不恰好な芽にどこか不思議な魅力を感じて、時々こっそりやってきては水やりをしていた。やがて花開いた彼は大衆に愛された。ほら、やっぱり素敵な花が咲いたでしょ。嬉しさと、少しだけ寂しさを感じながらそれを遠巻きに眺める。
本当のことは容易に口にできるないから。その告白は僕の血を伴った。本当のことだから容易に君の心は動かさない。僕の心を拒んだ君は血溜まりに歩み寄ってそっと花を植えた。根からそれを吸い上げた花弁が真っ赤に染まるのを見て、僕は死ぬ。叶わなくても、君に恋して幸せだった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『血みどろの告白を使って30分で即興してね。特別ルールは死体必須と植物必須』です。
鉄板の上でたいやき君は怒りに震えた。子供達はこいのぼりに夢中である。鯉の分際で!こっちはあんこを詰め込まれているとはいえ、腐っても鯛だぞ!いや、新鮮だけど。悔しいのでたいやき君は空を飛ぶことにした。こいのぼりより高く飛んだところでカラスに食われた。美味しいでしょ?
愛しのあの娘の好みはカッコよく飛ぶ男だと聞いて、東鳥大学に入って日本一の鳥になると決めた。とは言え名門校に入学するには実力が足りない…僕は借金をして裏口入学をした。入学したは良いが、エリート達についていけない。放課後も必死に練習してたら彼女が笑った。「頑張って」

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「鳥」、あっさりした作品を創作しましょう。補助要素は「裏口or裏門」です。
日本住血吸虫♂は決意した。今夜こそ、運命の雌を全力で抱き留める!来たぞ!ちょっと可愛い娘が!「いまだ!抱雌管びろ〜ん」「ちょ…やだ何あいつキモー」「絶対童貞だよねww」ギャル達の心無い言葉によりトラウマを負った雄たちは絶食系男子になり、日本住血吸虫は絶滅した。
死んだ君の脳を人工知能にトレースする。姿も仕草も言動も思考パターンも皆かつての君そのもの。一からやり直して、全ての失敗を回避し、今度こそ君を幸せにする。それでも君はある日別の男に走っていく。また失敗だったと君を眠らせる。死んだ君の脳を人工知能にトレースする…
膨れ上がった恋心が理性を吹っ飛ばしてしまって、ずっと我慢していたというのにあの人の姿を探したくなってしまい、ほんの少しだけだからなんて思いながら夜の街を覗き込もうとするけれど、結局愛しい姿を見つけられずに慌てて離れていく彼女の姿を、人はスーパームーンと呼ぶ。
膨れ上がった恋心が理性を吹っ飛ばしてしまって、ずっと昔に袂を分かったあの人の姿を探したくなってしまい、こっそり夜の街を覗き込もうとするけれど、分厚い雲に阻まれて何も見えず、泣く泣く引き返していく彼女の姿を、一番星がスーパームーンと名付けたのを僕らは知らない。
バイト帰りに偶然彼に会って、その途端に空が晴れてきたなんて、天の恵みとしか思えない。「なんか今日、月がでかくて綺麗だな」しかも夏目漱石ネタで告白された!私も文豪ネタで応えないと!「死んでもいい…私、死んでも良いわ!」「えっ?!」私のかたこひはバッドエンドを迎えた。
「融けちゃう…」彼女は震える。「良いんじゃない、春なんだし」言いながら覆い被さると「だ、め、まだ」と悶える。だが僕は容赦なく熱を注いで彼女を融かす。融けてひとつになる。「忘れないでね、次の冬まで。私の事」忘れるものか。冬になると僕と離れて地上に降りる美しい雪の精。
イキジビキ・ロボットは少女が幼い頃から沢山の疑問を解決してきた。「あの子に会うとどうして動悸がするんだろう」美しく成長した少女がそう問うと「きっと彼は危険な男なのですよ」とイキジビキは答えた。イキジビキはどうして突然自分の出力装置が壊れてしまったのか判らなかった。
美しい女は不老不死の薬を持って月へ逃げた。その美貌も永遠の命も孤独であっては意味がないと気付いた時には既に遅く、女は一人で涙を流す。時折こっそりやってきた兎が涙の一粒を地上に運んでいき、草の上で寂しく光るそれを優しい夫がこっそり舐めとって彼女を思い出している。
毎晩自分にぶつかってくる蛾が本当は月に向かいたいのだと知って、街灯は夜道を駆け出した。追っても追っても遠ざかる本物の月のように振舞ってあげたかったのだ。だがすぐに電球が切れてしまった。突然の暗がりに蛾は暫く慌てていたが、やがて僅かに残った電球の温もりに身を寄せた。
彼が好きだという音楽をむしゃむしゃ食べてみたけど、イマイチ味がわからなかった。それからその彼とは別れたんだけど、未だに消化不良のヘビーメタルが欠伸をするたびに腹の底からガンガン鳴ってしまうので油断のできない日々が続いている。
長々喋り続ける男の口は乾きに乾き、砂漠化が進んだ。交通手段としてラクダの需要が高まり、猛烈な勢いで繁殖した。増えすぎたヒトコブラクダとフタコブラクダの間で第二次ラクダ大戦が今にも起きそうな段になって男が水分を摂取したため、ラクダの塊はのどちんこの下を流れていった。
子供の頃、私が風邪をひくと母は本を買ってきた。熱が下がった昼下がりに私はベッドで本を読み、母はパートに出かけた。年老いた母は寝込むことが多くなった。出勤前に本を渡すと「それはもう読んじゃったよ、つまんないね」なんて言われる。母の本棚には私の書いた本が並んでいる。
山辺皇女は裸足のまま駆け出した。父王の喪中に謀反を企てた咎で、夫は今頃水の底に沈んでいる。私はただ、愛しい人と二人で静かに添い遂げられるなら、それだけで幸せだったのに、どうしてわかってくれなかったのか。言いそびれた本音を胸のうちで燻らせながら、皇女は身を投げた。
山辺皇女は裸足のまま駆け出した。父王の喪中に_人人人人_ > 突然の死 <  ̄^Y^Y^Y^Y ̄などと不謹慎なツイートをした咎で、夫は今頃水の底に沈んでいる。あれほど気をつけろと言ったのに、何故こんなことをやらかしたのか。皇女はふぁ ぼを解除してから身を投げた。
「あれは良い歌い手なのだろうな」女王に問われた側近は頷いた。「あれは国一番の歌姫です」「お前がそう言うならそうなのだろう」芸術に疎い事を恥じる彼女は彼の感覚を頼っている。「私が好きなのは子供の頃お前が歌っていた子守唄だ」「私は国一番の音痴です」「それが、よいのだ」
君の携帯番号を入手したのに、手が震えてしまって未だ一度もかけたことがない。夢の中で私はまだ君の番号を知らないのに、携帯を胸に抱いて君との電話を想像するだけで満たされている。朝、目覚めると幸せな気持ちはたちまちしぼんでゆく。君の隣には別の人がいることを思い出すから。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「電話」、切ない作品を創作しましょう。補助要素は「夢」です。
私は菓子パンになりたい。たっぷりとグラニュー糖をまぶされ、甘い物好きの彼女の口に飛び込むのだ。だがナイフで白い部分と耳を切り離された食パンは自分の本体が白い部分の方であった事を知った。せめて自分から離れた耳がラスクになってくれるよう、神に祈った。
ピッツァの斜塔はピサの斜塔より人気が無い。ピッツァな上にピサの斜塔よりもっと傾いているからだ。孤独なピッツァの斜塔の元に一人の男がやってきた。「前世の約束を果たしに来た…言ってくれ、あの言葉を」「俺でも…俺でも食ってろ、デブ!」そしてデブとピッツァは一つになった。
母さんはお星様になったのだと教えた息子は宇宙飛行士になった。空の向こうで母に会えると大人になっても信じていた。初めての宇宙で息子は行方不明になった。人々は私を慰めに来たが、不思議と悲しみは無かった。自称宇宙人だった妻は息子を産んだ後、星の綺麗な日に失踪したのだ。
海の中には母があるのね、とある日娘が言い出した。どうしたんだ急に。漢字の話よ。それから暫くして、娘は海を見つめながら泣き出した。お父さん、私、お母さんに会いに行くね。僕は娘を止められなかった。既に娘の足は、かつての妻にそっくりの美しい尾に変化していた。
GW明けに五月病と風邪を併発したいそぎんちゃくは空咳が止まらない。ケホケホ言っていたら遂に血――ではなく墨が口から飛び出し天気の良かった空が黒に染まった。それ以来太陽から月まで幅広く真っ黒で日食どころではない。
海は空が大好き。よく晴れた昼下がりは青色に、曇りの日は鉛色に、夕焼けの時間は紅色に染まって空の真似っこをする。でもよく晴れた新月の日は真っ黒にしかならないから、ねぇお星さま、もっともっと輝いてってお願いする。
肺の中が空っぽな君がかわいそうで愛しくて、拾ってきたガラクタで満たしてあげたけど、そしたら君はかわいそうじゃなくなって、でも君は今更空っぽになんか戻れないなんて言うから、君の肺を私の涙で満たして、私の肺を君の涙で満たして、私たちは一緒に溺死した。
あの人の荒れた唇をこっそり見つめて瞼に焼きつけた。夜に一人、空想の中で口づけしてみたら、ささくれが刺さってとても痛かった。
貴方の足元に拡がった汚いヘドロの中には丸いビー玉が混ざっている。悲しくて腹立たしくて拳で殴りつけるとヘドロが飛び散りビー玉が割れる。汚れていたビー玉から綺麗な断面が出て来て光を反射する。輝く硝子の破片が大丈夫、貴方は綺麗だよと囁く。だから時々また叩き割っても良い。
自分の事が嫌いだと言って君は泣く。僕が黙って隣にいると、止まらない涙で海が出来る。泣き止んだ君の海は温かい。君がまた泣き出して波が起きる。僕は君の温もりの中で静かにたゆたう。
空がゴロゴロ言っていますが、あれは雷じゃありません。実は私たちがいるこの世界は神さまのお腹の中で、神様は今お腹を下しているのです。でも大丈夫。私たちはこのまま横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、肛門と移動して適切に排泄されます。ほら、乳酸菌が来た。
かみのけ座は焦っていた。もうすぐ東の空から愛しの彼が昇ってくるのに、髪の毛が絡まっているのだ。そこを突然現れたぶらし座流星群が通り抜け、かみのけ座はさらさらヘアーになった。ありがとうと笑う彼女に、俺の気も知らないで、とため息をつき、流星群は地平線の向こうに消える。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「星」、甘い作品を創作しましょう。補助要素は「三角関係」です。
トナカイは高そうな壺を割ってしまった。サンタはバイト中だ。サンタはトナカイを養うためオフシーズンもバイトを掛け持ちしている。泣きそうだった。そこへサンタが帰宅。「目が覚めた…俺サンタ辞めて就活するわ」「えっ」呪いの壺から解放されたサンタは自由の身になったのだった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「トナカイは高そうな壺を割ってしまった」
診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は「鏡」というお題で、10個のストーリーの違うTwitter小説を書きます!

生まれた時からあの人のしもべだった。毎日あの人は僕の元へやってきて、僕はあの人の姿を映した。幸せな生活だった。何故あの日、素直に自分の気持ちを言葉にできなかったのか。「この世で一番美しいのはだあれ?」照れ隠しで口にした別の娘の名前が、あんな悲劇を引き起こすなんて。
幽霊を映す鏡があると聞いてその館を訪れた。3年前と変わらぬ姿で夫は微笑んでいた。もう離れたくない、ずっとここにいたい。夫は静かに首を振る。鏡に映るのは現実の君と逆さまの世界だ。本当はもう俺がいなくても平気だろ。中から手が伸びてきて、私の涙をぬぐった後、夫は消えた。
道鏡は激怒した。未婚の女王から祈祷のオーダーが入ったから密かにワクワクしたのに、まさかのアラフォーだったのである。道鏡はロリコンである。純潔だというから幼女かと思ったのである。だが寂しげな横顔にちょっと惹かれた。道鏡のストライクゾーンは拡がったが未だ処女厨である。
うつむきながら、君は手元の鏡をひたすら磨いている。汚れが落ちないの、と泣いている。鏡は綺麗に光っていて、そこに映る君はとても美しいのに。それを奪って鏡に落ちた君の涙を服の袖でぬぐってやった。少しくもったそれを見てちょっとだけ綺麗になった、と呟いて君は泣き止んだ。
鏡の国でアリスは全力疾走。様々な生き物に出会い、苦難を乗り越え、8番目のマスに到達して女王に成ったが。「こんなに苦労して、肝心の王様がぐーすか眠ってちゃ張り合いがないわ!」そこで目覚めた。楽に栄光が手に入るなんて最高じゃないか。夢の中の自分は何を言っていたのだか。
筒の中に鏡を並べて作った万華鏡で、いつもの景色が違って見える。いつもと違う輝きを持って、景色がパズルみたいになる。「何見てるの?」近づいてきた彼の姿が、ばらばらになって合わさって、でもいつもと同じぐらいキラキラしてた。彼の事はいつも心の万華鏡を通して見てたみたい。
子は親を映す鏡と言うが息子は私に似ても似つかない。落ち着きがなくすぐ暴れ回る。汚れた食卓を見てダメだと思っているのに声を荒げてしまった。「どうしてちゃんとできないの!」良い母になれない自分が情けなくて目が潤む。息子は怒り顔で目に涙を溜めていた。子は親の鏡だった。
鏡職人は鏡を磨く。全てがより美しく映るよう、表面を綺麗に真っ直ぐにひたすら磨く。献上先は憧れの王女さま。高貴な身でありながら、自分のような卑しい者にも優しく声をかけてくれる。姫がそれを使う姿を想像し、思わず鏡に口付けた。その鏡に映った自分の醜い顔に悲しさが募った。
銅鏡は激怒した。いつまでこんな地下の地下に私を閉じ込めておくんだ!遠くの地で邪馬台国大和説vs九州説などで学者達が争っているらしいが、見当違いも甚だしい。さっさと私を掘り起こして議論に決着をつけるべきだ。苛々する銅鏡をネフェルティティのミイラがまあまあ、と宥めた。
子供の頃、テクマクマヤコンが欲しかった。海外に住んでいたので、日本のアニメグッズはなかなか手に入らなかったのだ。母は自分のコンパクトに可愛いシールを貼り、これで我慢してね、なんて言った。今では私も母親になった。時折母をまねて、私も子供のおもちゃを手作りしている。
私の言葉を何度でも優しく聞き返してくれる君の声が好きで、私はいつも囁くように語る。時間をかけてゆっくり成立する会話が終わって欲しくなくて、声がますます掠れた。
いつもの時間いつものように空を通ったら。「おい邪魔だ!」突然怒鳴られてびっくりした。どうして?「今日は日食だったのさ」飛行機に言われて地上を見ると沢山の人。ごめんね、僕、知らなくて。雲がしくしく泣いた頃、地上では青い傘が今日の雨はなんだかしょっぱいと呟いている。
大きくなったらとうきょうに行ってけっこんしようね。そう言って砂場で東京タワーを作った日から30年。東京進出は叶わなかったが、この片田舎で作った部品が画面の向こうの新たな東京のシンボルに使われている。やっと渡せた指輪に「遅いわよ!」と怒りながら君はテレビを見つめた。
「キスってどんな味?」スーパーで買い物中、幼い姪っ子にそう聞かれて、暫く考えた。参ったなあ、もう何年もしてないから忘れちゃったよ。「なら、食べろよ」「えっ」突然声が聞こえて、思わず振り返った先は鮮魚コーナーだった。「食べろよ」
「最近ご無沙汰で味を忘れたって言うから、俺を食べろって言ったんだよ」白身魚は私にそう言った。いや、そういう意味じゃないし、キス違いだし、だいたいなんでこいつ私の心が読めるんだ?そこで思い出した。元彼は3年前、釣りに出かけたまま行方不明に…まさか!「人違いだ」

未ポストのネタです。上の続き。
神さま、わたしをたんぽぽの綿毛にしてください。風に乗り遠くへ飛んで、何も成せずに土の上で絶えるだけの一生だけど、それでも、母のもとから発つその一瞬だけ、他の子たちと同じように太陽の光できらきら輝いて春の美しい景色の一点になる、そんなたんぽぽの綿毛になりたいのです。
止まない雨はない。優しい声でそう言った彼が私のもとを去ってから雨が降り止まない。どんどん降って、地面が水浸しになり、床上浸水したので船を買いにでかけたら、泥の船を漕ぐウサギがいたので相乗りした。水面は上昇し、ついに地球から水が溢れ出し、私とウサギは宇宙へ漕ぎ出す。
何度も世界を滅ぼしてきた永遠の命をもつ私。「お前を悲しませはしない」そう言って私を手にした貴方。孤高の戦士は今日も私を握る。世界を救うために。貴方だから、私は身を任せ力を解き放つことができる。同じ、平和の夢を見ながら。
鋼の心を持つ女が幸福を買いに来た。天まで届く銀貨の山を見、天使は美貌、名声、財、知性、愛、幸福に結びつくべき全てを与えた。今わの際、幸せになりたいと叫びながら憤る彼女に、天使は悲しみ苦しみ傷つくことのできる脆弱な心を与えると、女はその刹那だけ僅かに微笑み、眠った。
鼓膜が破れた。あまりに勢いよく破れたので半月程気づかなかった。目撃者によると私が別れの言葉を聞きたくないがために耳を塞いだため、彼がものすごく近くてありえないぐらいうるさくさよならと叫んだらしい。私は破壊された鼓膜の破片を探す旅に出て、地球の裏側で彼と再会した。
「大きな目が好きなのよね」そう言うなり彼女はナイフを取り出し、俺の目の前で自分の右目を抉り出した。「あの娘のより、私の方が大きいわよ、ほら」不気味に笑いながら差し出してくる。俺は声もあげられず逃げ出した。どれだけ逃げても、血まみれの目が追ってきて俺を見つめてくる。
最近はその無口さを不気味にも思っていたが別れ話はこじれず助かった。そう思った瞬間、女は突然ナイフを取り出した。「大きいのが良いんでしょ?私の方があの娘より大きいよ」そう言って自分の乳房を勢いよく切り落とす。「持っていって」そう微笑む女の左胸で心臓が露になっている。
富豪に嫁いだ若い娘は世界中の店を飛び回り商人にツテを作りネットオークションを利用して、何かをひたすら買い続けている。浪費家を娶ったと同情される富豪はしかし優しい眼差しで妻を見つめる。彼女はかつて継母の意地悪で質屋に売られた自分の部屋の鍵を買い戻そうとしているのだ。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「買い物」、暗い作品を創作しましょう。補助要素は「扉」です。
おへそコレクターのもとには時折母親のなりそこないがやってくる。産み落とせなかった我が子のおへそを探しに来るのだ。おへそコレクターは雷を落としてへその緒に見立ててやる。母親のなりそこないは赤子のようにそれを握り締めて眠る。涙が枯れると空は晴れ渡り、女は全てを忘れる。
1枚ぐらい無くなっても大丈夫でしょ。そう言って彼の舌を食いちぎってやった。その後も彼の生活は変わりない。私に愛を囁かなくなった以外は。キミダケヲアイシテルなんて薄ら寒い言葉を乗せていた二枚舌は味わっても全然甘くなかった。
詩人の肉は確かに世界一美味だが、ワニは満たされたかのように振舞っているだけである。その証拠に胃の中ののんきな詩人が夕陽を熟れた果実になぞらえた途端、ワニは紅の海へ飛び込んだ。肺ごと塩水に漬かったワニの肉は確かに世界一柔らかいと詩人は詠うが、未だにワニは空腹である。
お父さんはゴロゴロしている。狩人なのに、怠けたらいけないんだ。そう言うとお父さんは今週の分はもう集めたからいいんだよ、と言う。僕は雲の上から街を見つめる。あのおかっぱ頭の子、可愛いなあ。呟いたら、お父さんが「へそ、取ってくるか?」「いいの?」僕は稲妻を落とした。
俺の胃袋は宇宙になってしまった。去年の誕生日ケーキに乗っていた砂糖の小人が宇宙を飾り付けて王様気取りらしい。金平糖の天体ショーをハンバーガーの上で眺めさせ、住人から金を稼いでいるようだ。だが最近俺が星の王子様カレーを食して以来、政権交代が危ぶまれているとか。
東京のひよこは遂に東京を脱出する。初めての飛行機に乗り、地方民に東京の素晴らしさを布教するのだ!だがそこには博多のひよこと名古屋コーチンがいた。このパチもん!お前こそ!殴り合いの末ひよこ達には友情が芽生え、今や3羽一緒にニワトリになれる日を夢見ている。
拾得物置き場は薄暗くほこりまみれだ。そこへ毎日彼女はやって来て、主人に忘れられた哀れな落し物たちに優しく声をかける。こんにちは。ごきげんいかが?ある日くまのぬいぐるみは気付いてしまった。あなたも私たちと同じなの?ご主人を待ってるの?
「東京がお前を変えたのか」「何よいきなり」「なんでそんな姿になっちまったのかって言ってんだよ」「あんたには関係ないでしょ、あたしが誰の子を身篭ろうと」「そんな腹、俺には包み込めない」「――ッ!そんなのこっちから願い下げよ!」ししゃも足はスキニージーンズに怒鳴った。
大好きな彼の隣はとびきりお洒落な靴で歩きたい。大事にしまっていたパンプスで出かけた初デートの帰り。小指の隅がヒリヒリ痛む。「靴ズレかよ。バカじゃねえの」幼馴染に鼻で笑われた。わかってないなあ、これは恋する乙女の勲章よ?そう言うと幼馴染は不機嫌顔で黙り込む。
泥まみれの指に摘み取られた花は誇らしげに胸を張る。私、お嫁に行くわ。蝶々が最後の蜜の一滴を飲み込み、風がその微かな香りを遠くまで運んでいき、アリたちがこぼれた花粉を運んでゆく。泥まみれの指に摘み取られた花嫁は実をつけないが、彼女が咲いた証がどこかに繋がれていく。
王子様は信じられないくらい良い人だった。卑しい身分の私を許してくれた。礼儀を知らず口が悪くても許してくれた。ガラスの靴の主は私じゃなかったと告白しても許してくれた。あなたを愛してないと言っても許してくれた。王子様は信じられないくらい張り付いたような笑顔をしている。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「王子様は信じられないくらい良い人だった」
原因不明の病が突然世界を襲った。明日死ぬかもしれぬという恐怖に人々が震える。危機に瀕して種の保存に貪欲になった人類は軽薄な愛を囁き節度なく生殖行為に励み滅亡へ向かう。明日死ぬかもしれないという恐怖に駆られる原因不明の病が世界を覆っている。
占い師はすでに決心したようだ。長年続けた店を畳み道具を箱に詰める。占いは、己が力で世界を見つめ考える事を否定する。それこそが救いなのだと信じてきた。だがそれは間違いだと水晶は告げた。占い師は唯一の信念を捨て、新たな救いを模索する。それを吉とした水晶を最後に捨てる。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「占い師はすでに決心したようだ」
愛を語りすぎた天使の羽根は朽ちる。地上にそれを払い落として天使はどこかへ消える。時折愛を語らない悪魔がやってきてそっと拾いあげる。
薄っぺらな言葉しか乗せないあなたの唇はまるで堅く閉ざされた扉の鍵穴のようだ。どうやってその奥深くをこじ開けよう。指先で唇をそっとなぞってやると貴方はほんの少しだけ震えた。
別にスカイツリーなんて10年20年経ってもあるんだし今すぐ慌てて見に行かなくてもいいじゃん?地方民のその言葉にスカイツリーは激怒し、全速力で駆け出した。いつでもあるなんて思うなよ!「あ、東京タワーちゃんやっとかめー!」スカイツリーは名古屋タワーにつまづいて転んだ。
君が慌てて隠そうとして、ぬぐいきれずに零れた涙は、ぽろぽろと丸い結晶になるのを知ってるかい?とてもとても小さな音で地面をころころ転がるから、耳の良いハムスターの夫婦だけがそれに気付いて、しょっぱいねえ、しょっぱいねえ、なんて言いながら頬袋に詰めているのさ。
雨上がりのジャングルは沢山の水滴が太陽できらめいて眩しい。小鳥が楽しそうにさえずり、木々がうきうきと葉を開く。喜びに満ちている。カワガメが水面でのんびり日光浴を始める頃、川の底から「ブラジルの人聞こえますかー!」という声が微かに響いてくる。
夢想家の非現実な理想論は長々聞いていると反吐が出そう。熱弁を振るう唇を塞いでやる。つまらない言葉ばかり乗せる口元も舌でゆっくり舐めとると酔いそうなほど甘かった。驚きで見開かれた彼の瞳に、恋した女の顔が映っている。





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