ついのべ まとめ







ついのべまとめ      



診断メーカーさんから貰ったお題による
みどりは「川」というお題で、6個のストーリーの違うTwitter小説を書きます!


失恋して一人泣いていたら、美しい女性に声をかけられた。私もね、大切な人に信じて貰えなかったの。夜通し恋バナしてすっきりした一期一会の思い出。それから5年が経ち、彼女の正体を知った。あの川原出るんだよ、不義の疑いで斬首された城主の嫁。あの夜私は救われたけど、彼女は。
気付けば川原で父と二人。酔った父は川の水を飲んでいる。「おい、つまみねーのか」「そんなものないわよ」「なんだ役立たずが。帰れ帰れ!」「帰れってどこに…」そこで目が覚めた。涙ぐみ私を呼ぶ家族達。ああ父さん、そういう事だったの。しかし三途の川って酒でできてるんだな…
トマトの川はトマトでできている。上流のトマトは青色で、下流に行くほど熟している。上流のトマトはまだ硬いが下流に行くとぐちゃぐちゃになっている。時々料理人がやってきてバケツにそれを汲んでいく。トマトは上から読んでも下から読んでもトマトなので、川は時々逆流している。
人の噂が煩わしいので朝の川を越え私から会いに行く。そう詠って許されぬ恋を貫こうとした貴方のかつての恋人の真似をしてみたかった。「困った人だ、こんなに裾を濡らして」動じずに笑って私を子供扱いする貴方。冷たい佐保川は簡単に渡れても、二人の間に未だ深い川が流れている。
私の愛するただ一人の男は死をも覚悟してやって来た私を拒んだ。「兄上の処へ帰ってくれ」幼い頃からずっと一緒だった。共に育ち、夫婦になるのを信じて疑わなかった。それがどうして。「衣が濡れるよ」そう言って優しく涙を拭い、突き放す。私は朝の川の冷たさを生涯忘れないだろう。
愛しているなら私から奪い取れ。そう言うと若い弟は狼狽した。自分の意地悪に心中で笑う。本当は若者らの無茶が見たいのだ。道を外れて愛を貫けばいい。かつての自分ができなかったこと。帝の后となった幼馴染。川面に浮く山吹の花…。だが自分似の生真面目な弟はやはり諦めるだろう。
仕事が山になっている。疲れた。毎日暑いし…「これしきで弱音とは…まだまだだな」「ゲンさん!」「甘ちゃん坊やは先に行くんだな。ここは俺たちが食い止める」「リュウさん!」ゲンさんとリュウさんが合わさって源流となったその日から、仕事は止め処ない川となり流れ続けている。
誰もいないはずの山奥で美しい少女に出くわし、ダム建設ロボは手を止めた。「お願い、私たちの山を壊さないで」ロボットだって不思議に出会う。悲しいと思う心もある。だが工事を続けられぬロボは故障品として回収されるだろう。守れなくてごめん。山の神に謝りながらロボは停止する。
人間達が川を綺麗にしたいって言ったから。流れてきたゴミや汚物をありったけ集めて、河童くんはゴミ置き場に持っていこうとしたのに。心無い人間は、まあ臭いなんて言って消臭剤をシュッシュとかけていった。臭いが無くなり帰り道がわからない。無臭のゴミを抱えて河童くんは泣いた。
おでんの川。まず米のとぎ汁が流れてくる。大根をゴロゴロ。しばらくしてだし汁が流れてくる。大根とこんにゃくを放流する。中流あたりですっかり大根の角が取れこんにゃくには切り込みが入る。ちくわや餅巾、河口付近ではんぺんを投入。おでんは海へ流れ出てポセイドンに捧げられる。
156歳で死ぬまで、呆けた祖父は引きこもってばかりだった。口癖のようにチキュウに優しくしなさい、と言っていた。ある日僕がここはエウロパだよ?と言うと、お前にとってはここが地球だ、と返された。あの寂しげな目を思い出すと僕は何故だか地面に耳を当て星の声を聞きたくなる。
クリスマスまであと5ヶ月。サンタは言った。「ホー、ホー、ホ「ホホー ホッホー ホッホホー ホッホー ホッホホー ホッホー ホッホホー」「……(怒)」その年以降、クリスマスはターキーではなくキジバトを食すのが習慣になった。
路上で偶然見つけた茶色い仮家に住み3日経った。照りつける太陽から身を守るにはこの壁はもろ過ぎるし大きさも合わない。だが抜け出そうとした途端、何者かが囁いた。出たら7日で死んじゃうよ。外では元の家主の同胞らが叫び続けている。ヤドカリは震えながら彼らの鳴きまねをする。
血の海から紅の空を見上げると長い尾の輝く火の鳥がいる。一面赤の世界でひときわ眩しいその聖獣は時折鮮やかな青の草を咥え遠くの山に消える。それが見られるのは吉兆の証だと言って老人は拝むが、あれは恋した雄鳥の業だと知る博識の若人は嫉妬と劣情に悶えながらぬるま湯に沈む。
神は贅沢三昧の人類に罰を与えた。地上から火を奪い去ったのだ。もはや暖をとることも調理することも叶わない。僕はフライドチキンが好きだから悲しかった。そしたら爺ちゃんが空に向かって弓を引いた。火の鳥が落ちてきた。焼き鳥を二人で食べた。僕は長く生きた者の機転に感激した。
肝試しをした夜に怖がりの君が泣き止まなくて、困った私はただ君の手を握っていた。十年も前のことだ。もうお化けは怖くないと言うから、じゃあ何が怖いのと聞くと、俺が死んでお前が泣くのが怖い、なんて言う。言葉が見つからず黙って細くなった手を握ったら、心電図が微かに乱れた。
優しいひとは、優しい仕草で、優しく寄り添い、優しく微笑んで、優しい声で、優しい言葉をかける。優しくないひとはそんな優しいひとを優しくない態度で追い払う。優しいひとは、優しい気持ちで、優しくないひとを許す。優しくないひとは優しいひとのそんなやさしさにも深く傷つく。
白い砂浜で目隠しされて君にすごいねと言われた僕は、一流のスイカ割り師になった。スイカ割り師はどんなものも一撃で叩き割る。「聞いた?先輩、彼女できたらしいぜ」鈍なフリして言ってやる。君の恋心を壊しても僕に振り向いてくれはしないのに。またつまらぬものを割ってしまった。
死んだはずだった。だが踊り子は目覚めた。白い地面。眩しくて熱い。砂浜?でもなんだかねっとりしてる…。状況は飲み込めないが、つい癖で踊り子は踊り始めた。仲間もいる。と、そこに。「うわーっ黒い滝だー!」自分は鰹節に生まれ変わったのだと気付いたときには醤油まみれだった。
ヒーローになる夢を叶えられず死んだ僕は安全ピペッター(ゴム製)に転生した。科学者の安全を守るゴム製ヒーロー!シュコーシュコー。今日も空気を吸って吐く。たまに不器用な新人に濃硫酸を吸わされる。ポゴォwwwゴムがダメになり廃棄された。来世ではシリコン製になりたい。
何故、そこにおはす。彼の人は答えない。まるで息など長い間止めているかのようにそこに居る。だが私には判る。内にまだ燃え尽きぬ熱き何かを秘めるその姿。しかし私はこの道を行かねばならぬ。お退き給へ。

「ジージジッジジ」「ぎゃああっ」気をつけろ、蝉はまだ生きてる。
カタカゴの夢を見る。節電で冷え切らぬ電車の春のような暖かさと、女子中学生らがひそひそと囁き合っている恋の話が、遠い記憶を呼び覚ます。無くなった故郷の花畑。一面の紫色。実らなかった初恋。甘く苦い記憶がカタクリの粘りの如く迫ってきて僕を逃がさない。あの、カタカゴの日。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は、この中から2つ以上を選んでついのべって下さい。「中学生」「逃げる」「暖かい」「電車」「デンプン」
1週間前、買い物帰りに坂道で転んでレモンをぶちまけて。綺麗な女性が拾うの手伝ってくれたんですが彼女に見惚れて一個取り逃しちゃったんです。それからずっと喉の奥が酸っぱくて…やはりレモンの呪いでしょうか?「逆流性食道炎ですね、お薬出しときます」
わかるよ星人が現れた。わかるよ星人とは、悩みや苦しみに共感することで人々を救おうとする者である。わかるよ星人はわかるよ、と言いながら心をいためる。今日は劣悪な家庭環境で育った故に殺人犯となった男の心を取り出し、フライパンで炒め、食した。この味は美味しい、わかるよ。
洗濯板のギザギザの狭間に残った泥っかすである。カンカン照り。すっかり乾いた。かさかさ。昔は泥水だった。洗濯桶の中でかき回された。冷たい。洗濯桶の中で泥水になった。汚れたTシャツと澄んだ水の出会い。ごしごし。その前は井戸の中に居た。薄暗い。泥汚れのことは知らない。
やる気のツボ。ツボの中に働きたくないでござると言う気持ちを思う存分ぶちまける。やる気のツボはそれを材料に前向きになる力や嫌な事を一時的に感じなくする力、疲労感を忘れる力を作り出す。日曜日に需要が増加。サザエのような形をしている。
ポチが動かなくなった。クラスの奴らが殴って蹴って壊したんだ。大丈夫、父さんがなおすよ。ヤだよ、新しいの買ってよ、こんな旧式ダサいよ。父さんは困ったように笑った。父さんは感傷的で非生産的だ。チキュウに残してきたポチそっくりの本物の犬とやらもどうせダサいに決まってる。
絵師は歌を歌い出した。歌いながら絵を描いた。へたくそで耳障りな歌。筆は乱れた。悔しい。世界一の絵描きが初めて恋した相手は音楽を愛する盲目の女性だった。筆なんか折ってしまえば良い。悲しい気持ちでアトリエを出る。その隙に彼女はこっそりやってきてカンバスに耳を当てる。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧の「ついのべ」冒頭を代筆します。「絵師は歌を歌い出した」
充電中の稲妻屋さんの所へ来た女の子。ゴロゴロ持って来たから買ってちょうだい。ごめんね、ゴロゴロはさっき野球選手から買っちゃったんだ。女の子が悲しそうな顔なので稲妻屋さんはヤクルトをあげた。貰い物だけど良かったら。女の子はヤクルトを飲むとおへそを隠して走って行った。
卵ぼーろは赤ちゃんのおやつになるのが夢だったのに、やつれた女の前に居た。どうしてこんなことに。いや、彼女が卵ぼーろを心から愛する卵ぼーらーならまだいい。だがそんな様子でもない。きゅーごろごろ。女が突然トイレにダッシュした。今だ!卵ぼーろはテーブルから飛び降りた。
焼き鳥の日。君を思い出す。わずかな北海道の訛りで豚串を焼き鳥と言ってしまった君を慰めた日。今やすっかり東京の女気取りの君は別の男の元へ羽ばたいて行った。僕は自分が鶏なのか豚なのかもわからず思い出にしがみつく。
ロスタイムは焦っていた。長年サッカーの試合を懸命に支えてきたのに、近年アディショナルタイムなる名前だけが違う新人にその座を奪われつつある。ロスタイムは中年男性の唇に飛び乗った。「ロスタイム1分か…短いな」「パパ、アディショナルタイムだよ」いきなり存在を否定された!
子の無い夫婦の下にジンジャー・ヤマトシジミ・マンは生まれた。ヤマトシジミは、味噌汁にはなりたくない、と思った。でも既に砂抜きされてる。怖いよ嫌だよ。ヤマトシジミは殻をパタパタしてボウルから飛びだした。絶対に捕まるもんか!
翌日の新聞見出し:ヤマトシジミに奇形発見!
女は昔と変わらぬ姿だった。その腹部以外は。「どうしてそこにいる…」「上陸させて。そこで産む」「妊婦の宇宙飛行は禁忌だ。着陸も出産も許可できん」「お願い産ませて、あの人の子よ」スイッチを押す。悲鳴が聞こえる前に通信を遮断した。だからだ、という呟きは誰にも聞かれない。
月はいつも地球に同じ面を向けていて、その裏側には神さまが住んでいる。夏になるとスイカを食べて、ぺっぺっぺと空に向かって種を吹き飛ばす。たまに白い種が遠くまで飛んでいきお星さまになる。種が発芽してにょろにょろ伸びていくのが見えると地球ではペルセウス流星群なんて呼ぶ。
久々に帰省した。小さい頃慕っていたおっちゃんの家の縁側で夜空を見上げる。「田舎の空は綺麗だね。都会じゃ星なんて殆ど見えないよ」「あっちの神様は忙しいから磨いてる暇がねぇんだろうなあ」そう言いながら何かを布で丁寧に拭いている。そういえばこの人、昔から歳を取ってない。
影の王子から手紙を貰った。読めずに困っていると光の王子がそれを照らした。文字が影となって現れる。『僕は影、貴女は光。決して交われぬというのに、貴女を愛してしまった』私が泣いていると光の王子がそっと目を閉じ、世界を暗闇にした。光も影もない世界で私たちはひとつになる。
人参の事を考えると泣けてくる。大嫌いな人参。青臭くて不味い。幼い頃、こっそり捨てようとして母にハリセンで叩かれた。でもいまや食べなくたって叱られることもない。お前なんか、こうしてやる!「コラッ」人参に割り箸を刺したら、それに乗って帰って来た母にハリセンで叩かれた。
プロデューサーチームは音楽性の違いにより解散した。最後に製作していた楽曲の一節について意見が分かれたのだ。未完の楽譜からは暇な音符たちが時々抜け出し演奏家の下へ遊びに行く。時折別の楽譜に影を落として曲を変えてしまう。だからあの歌手は音を外してるわけじゃないんです。
僕がただの影踏み小僧だった頃、公園で泣いていた君の影を踏んだ。泣き止めなくて苦んでる君のため。泣き虫の影だけが公園に残り、君は気丈に振舞う。でももう我慢せずに泣いてほしいから。僕がただの影踏み小僧をやめた頃、大人になった君が僕の隣で思い切り泣く。
昔から、祖母の家に行くとおはぎを食べさせられる。戦時中は貧しくて食べられなかったからと、祖母は自分の憧れだった和菓子を子供に食べさせたがるのだ。あんこ嫌いだった私は苦痛だった。大人になりそうして食物を厭えるのもまた平和の証だと気付いた。今年も祖母とおはぎを食べる。
悔し涙と、それを流しながら拾っていた砂をちょいと拝借し、ラムネの空き瓶に入れる。空色のビー球で蓋をすればリゾート海岸の完成だ。浜辺でリラックスしていると、高校球児の来年こそはという思いで熱くなってくる。人の不幸で愉しもうと思ったのに。魔女は舌打ちしながら脱出する。
頓服薬「アノヒトニワルギハナイシ」は現在日本で最も売れている薬と言われる。日常のちょっとした対人トラブルで自分を抑えたい時に使われることが多い。来年特許が切れるのでジェネリックも普及するはずだ。だが一部の専門家はその有効性を疑問視し、プラシーボ効果ではと指摘する。
なまぬるい赤い嵐はもう10年以上も私を苦しめている。四肢に絡みつき息を塞ぎ身動ぎすらできぬように私を抑えつける。溺れぬよう凍るような冷たい水で禊せねばならない。恨めしく思ううちに嵐は通り過ぎたかと思うと、私は気付けばその訪れを待ち焦がれている。赤い嵐は続いていく。
太陽系第三惑星の有機生命体資料館から脱走していたチキュウジンが第四惑星で発見されました。生態系に影響を及ぼしかねないため早々の捕獲が望まれます。群れたがる習性があることから他の個体を囮にした作戦が決行される予定です。また宇宙警察は羽切りを怠った資料館を家宅捜査する方針。
学校にも家にも居場所がなかった。いつも居心地が悪くて孤独で、生きるのが辛かった。去年死んだ近所のおじいちゃんはいつも美しい青い星の話をしてくれた。僕らは本当はあそこで生まれて死ぬべきなんだって。だからロケットを盗んで空を飛んだけど、チキュウがどこかわからなかった。
我輩はアヒルの子である。名前はまだないがいずれ白鳥になる予定である。子供らにもて遊ばれ親父の愚痴を聞かされる日々を送ってきた。子供らが私に飽きても親父のぼやきは止まなかった。最近はかつての子供らにそっくりな子供らが現れたが、我輩は未だ湯に浮かぶ黄色いアヒルである。
子持ちししゃもはその昔ししゃも足だった。下半身デブの情けない女のふくらはぎだったが、女が恋してダイエットしたため、カモシカに居場所を奪われた。子持ちししゃもは本物のししゃもになりオスのししゃもに出会った。恋した子持ちししゃもの卵から小さなカモシカ達が飛び出す。
ひたすら食べて太陽ぐらいの質量になれば、万有引力で世界のすべてを手繰り寄せられるはず。僕はあらゆる物を口にした。苦いピーマン、嫌な思い出ばかりの学校、僕の悪口を言う女子たち、君の心を奪ったアイツ。空っぽになった宇宙で君は嫌悪の軌道に乗り、睨みながら僕の周りを回る。
ヒトデは、その昔ヒトであった。やんちゃのし過ぎでヒトデナシと言われ、ひとでの足りない海岸近くの建設現場に回された。岩に貼り付き、かつて泣かせた親兄弟や友や恋人を思い出す時、真っ赤に熟れた夕日とであう。涙を流すなら、彼はヒトデナシではないし、ヒト でもない。
独りは嫌だったのに一番星になってしまった。辺りは真っ赤だった。空も、雲も、町並みも、みんな夕陽色なのに、自分だけ星の色だった。涙を堪えていたら、一人ぼっちのあの子を見つけた。じっと見ていたら、一番星!と叫んで大きく手を振ってくれたから、僕はいっぱいいっぱい輝いた。
僕の大好きな匂いはお日様の匂いなんだって。お母さんが教えてくれた。胸が苦しいのだって、身体が痛いのだって、お日様の匂いを嗅ぐと和らいでいくんだ。

ポチは太陽になったから悲しくないよ、とママは言うけど、ポチのタオルからはポチの臭いばかりして、僕は寂しくてたまらない。
記憶の中で最も美しい光景は、地平線まで続くレタス畑だった。太陽の光に輝く一面の緑。いつどこで見たのかは思い出せない。僕はずっと宇宙ラジオでレタスの歌を流している。母さんはもうレタスは忘れろと言うけど。この広い宇宙のどこかに、あの美しさを知る人がいるはず。僕は歌う。
太陽になれなかった惑星ニビルは大きな楕円軌道を描き太陽系の外を回る。そこには滅びる寸前に逃げ出したマヤ文明の名残や、ノストラダムスの魂が住んでいる。夏休みになると地球の小学生達のワクワク心を引き寄せ従えるが、地球なんか滅びろなどと思ってる中二病患者の心は拒絶する。
溺れ死んだと思ったのに、気付いたらずぶ濡れの街で人魚に抱かれていた。「運が悪かったわね」「…助けてくれたの?」船から落ちた事を言われているのかと思ってそう聞くと、彼女は首を振った。「この人魚の街はね、3年に一度だけ地上に現れるの。今日でなければちゃんと死ねたわよ」
警備ロボは高い塀に囲まれた畑を守っている。ある夜、若い女が花をくれ、と訪ねて来た。戦帰りの夫が痛みで眠れず苦しんでいると。花を手渡し、その髪飾りを請求した。女によく似たロボの主人は遠い昔、違法薬物製造の咎で処刑された。本当は人を救う薬を作りたかった優しい人だった。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は『機械仕掛けの密売人を使って30分で即興してね。特別ルールは装飾品必須と機械必須』です。
彼の好みはしっかり者の女だと聞いて、世話焼かれロボットを買った。バカでドジで弱音ばかり吐く女友達を甲斐甲斐しく世話する私。なのに彼はよりによってロボットに恋した。「彼女、意外にしっかり者だよ。依存してるのは君の方なんじゃない?」ロボットの癖に!私は彼女を破壊した。
ちょっとした不注意だった。牛乳を零した。コップが肘に当たったのだ。気付いたらカーペットに牛乳が染み込んでいた。必死に雑巾で拭く。何度も拭いて乾かしたら、見た目は元通りになった。だのに時折、不快な臭いが蘇り、胸がつぶれる。どうしてあの時、もっと気をつけなかったのか。
「此処にいたのか」震える声で、彼の人は云った。開け放たれた扉から光が舞い込み、眩しさに目が眩む。「今度こそ、息の根を止める」その言葉に固い決意が見えた。だが此方とて、殺される訳にはいかぬ。「死ねえ!」飛び掛ってくる刺客を月曜日は返り討ちにし、また一週間が始まった。
もうろくした婆さんに触れられたとき、俺の人生は終わった。この世に生を受けた時から嫌われ者になる運命は解ってた。だからこの道を極め、いっそとことん嫌われてやろうと決めていたのに。こんな終わり方なんて。

「このしし唐辛くないね」しし唐じゃねえ!俺は成長途中のピーマンだ!
夏休みが終わろうとしてる。お別れの時期だ。「お兄ちゃん、また来年も遊んでくれる?」「うん、約束する」母の実家の庭の隅っこ、二人で集めた蝉の抜け殻を土に埋めた。母に似た少女は何年も姿が変わらず、汗をかくのは僕一人。差し出した小指は宙を切っても、二人の絆は変わらない。
「こんな仕事、もう嫌!」靴屋の小人は叫んだ。「この仕事が夢だったんじゃないの?それにこの靴の主はあなたがずっと好きだった…」「だからよ!毎日彼が背の高い女にデレデレしてるの、見たくない!」「しっ!主が来たわ!」アイドルのシークレットブーツの中敷は小人が支えている。
異星人は虚ろな目で呟く。いつか地球に帰れるだろうか。私は右目に埋め込まれた水晶を見せる。映された青い星を食い入る様に覗き込む異星人は最早私から逃れられない。唇をこじ開け肌を重ね隅々まで弄る。やがて放心する男から報酬として渡されたロケットの残骸を私は身体に埋め込む。

診断メーカーさんから貰ったお題による(本当はついのべでない短編小説のためのお題なので近いうちに指定の長さで書き直そうと思います)
碧は『占い師・壊れた機械・パイロット』が登場する設定で最低7ツィート使ってエロ小説を創作してください。
コンビニエンス・ステーションで非常食と薬を購入する。出発までの時を店内のフリースペースで新聞を読みながら潰す。この新型の端末いいな、買い換えよう。時が満ちるといよいよ太陽系へ突入だ。1000年前に我々の祖先が旅立った故郷の星を観察するツアー。昔は、青かったらしい。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は、この中から2つ以上を選んでついのべって下さい。「宇宙飛行士」「閉じる」「軟らかい」「コンビニ」「葉脈」
せんせい、と呼んで追いかけたひらひらのロングスカート。大好きだったそれをまた着てくれた日、せんせいは言った。もう楽にしてくれないかな。ずっと血の気のなかった頬に僅かに差した赤み。そっと口付けると、せんせいは僕の白衣をきゅっと握って言った。ありがと、先生、さよなら。
ファインダー越しに街を眺めていた日、君に出会った。衝動的にフォーカスを合わせシャッターを切る。慌てて追いかけ声をかけた。「あの日の写真を捨てて」モデルになってくれた君は僕の耳元で囁く。「何故?綺麗に撮れてただろ」君が困った風に笑ったその時、警官がドアを打ち破った。
月は、悲しい。最近の若者と来たら、スマフォに夢中で下ばっかり見てる。たまに顔を上げたと思えば、カメラでパシャり。それか、月が綺麗ですねって言ってみたいだけで何も見てないカッコつけ。だから月は雲に隠れる。でも時々、そっと雲を二本指でかき分けて地上の様子を覗き見する。
数日前に襲った村から連れてきた女はとびきりの美人だった。頭や他の男達が放っておくわけがなかった。正気を失った女が笑う。「私、巫女なの。村では雨乞いばかりしていたわ」突然の嵐で船が沈んだのはその数日後だった。よく晴れた日、僕は彼女の足を、彼女は魚の足を貰って履いた。
サンドイッチになる前は、耳があった。まな板やヤカンやテレビの音、彼女の鼻歌がよく聞こえた。パン切りナイフに耳を切り落とされた時も、ざくざくという音がよく聞こえた。パン耳ラスクになったかつての私の耳はすまして、彼に私を渡せなかった彼女の泣き声を聞いているに違いない。
雨の日、誰もいない軒下で雨宿りしながらぼーっとしていると、虹の木を見つけることがある。虹の木は小さな水たまりに生えている小さな小さな木である。虹の木を見つけたら何もせず、ただぼーっと眺めていなさい。やがて雨上がりに花が咲いたとき、貴方は虹の根元を見ることができる。
見てはいけないと言われているから、もうずっと隣の部屋は開けていない。稀にこの部屋が静まりかえった時にだけ、物音がするのがわかる。そうでなければただの空き部屋と同じかもしれない。
あの子に貰ったガムを、くちゃくちゃひたすら噛んだ。一番星に向かってぷぅと風船を膨らます。涙が抜けきって軽くなった体がふわふわと浮いた。暗い空がゆっくり近づいてくる。四番目の星が見えた頃、薄くなった空気に風船は潰された。宇宙へはいけない。私は悲しい大地へ落ちていく。
「火星は全面禁煙って聞いたから」餞別に渡されたチュッパチャプス一年分。「これが全部なくなったら火星に呼ぶ。結婚しよう」あの時の彼女の笑顔を胸に頑張ってきた。真夜中のキャンプサイト、地球の方角を見上げる。心変わりした彼女への気持ちを弔う。白い棒を赤い地面に突き刺す。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧は、この中から2つ以上を選んでついのべって下さい。碧の今日のお題は『火星』『サイト』『タバコ』です。
空気は読むもんじゃない、吸うもんだ!私は全力で吸った。ゴオオッ!胸が澱んだ空気でパンパンになる。空気読めなどと私に言った連中が息苦しそうにしていたので、彼らも吸い込んでやった。そこで気付く。吸ったら吐かなきゃいけないんじゃね?ベトベトになった奴らが飛び出してきた。
言葉の池に、自分の心をくくりつけた釣り針を放った。日が沈む頃、苦しい、という言葉が釣れた。失せかけた茜色にかざすと、濁ったり、輝いたりしていた。誰にも見せたくないから、夜が来るまでぎゅっと握って、そこにうずくまる。言葉にしたってどうせ、誰もわかってくれない。
羽アリは考えた。羽がある僕らは一匹二匹でなく一羽二羽と数えられるべきではないかと。スズメバチが哂う。飛べないくせに。悔しくなった羽アリ♂は地を蹴り羽を振動させ、飛んだ。向こうから若い羽アリ♀が飛んできた。この日、5組のカップルが誕生した。おめでとう!アリがトオ!
心臓が不調なので毛ガニと交換した。毛の生えた強靭な心臓だ。硬い甲羅のおかげでどんなことにも傷つかない。たまにイライラとすると八本足がもぞもぞ動いて煩わしい以外は完璧な心だ。本当の敵が近づくと肋骨の間からハサミが飛び出す。そのうち、思考もカニ味噌でするようになった。
北米の生活は不便だったと母は言う。金曜、父の会社は早く終わり、家族で買い溜めにいく。土日、店は皆閉まっているから、母はホットパイを手作りする。父はよくゴルフに行くけど、クリスマスにはブッシュドノエルを作ってくれる。不便な方がいい。夜、私は一人コンビニ弁当を食べる。
タオル生地の枕カバーを、昨日見る夢にかけた。来なかった未来の熱を逃がさないように、そっと包む。あさ目が覚めて、来なかった現実に涙しても、濡れないように、そっと包む。熱は冷めないし、涙で濡れたりしないから、もう少しだけ泣いていようと思う。
誰も彼もが澄んだ透明色だという湧き水が、私にはどうしてだか澱んだ黄色に見えた。そっとすくって満月を映すと、黄色に混じって輪郭を失う。お前は気が狂ったんだ、と形のない月が喋った。まともなフリをして飲み干しな。みんなが飲んでいる透明色だという水が、私には黄色に見えた。
入植記念日。全人類が故郷を懐かしむ日。体調を崩し今年も僕だけ祭に参加できない。心配顔のママを見送ってベッドに潜り、遠い昔に誰かから貰ったおもちゃのロケットを抱いた。夢の中、原生海の底で未知の生命に出会う。「死んだ後なら仲間にしてあげるよ」エウロパの先住民は優しい。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「おもちゃ」、透明感のある作品を創作しましょう。補助要素は「乗り物」です。
ツヅキくんがスズキくんにズツキをしたからスズキくん家のススキが血みどろになってスズキくん家でススキを洗濯したけどススギのツヅキはツヅキくん家ですすいだ。
菓子作りに目覚めたのは中2のバレンタインだった。友チョコ交換しようなんて誰かが言い出すから、必死になって作っていったチョコケーキ。あんたがすっごい笑顔で美味しいなんて褒めてくれたから。「お菓子作り教えてよ」痛む胸を抑え、恋するあんたをキッチンに迎え入れる。
千年前の予言通り宇宙船はやってきた。扱い方は全て預言書に載っている。冷凍催眠されたただ一人の乗組員は滅びの死者。星を守る最後の人である私はこれを早急に仕留めねばならない。なのに、私は躊躇っていた。百年ぶりに見た知的生命体と、言葉を交わしたいという思いがこみ上げる。
目覚めろと、何かが言った。私を殺さなければならないと泣いていた異星人は夢だったのだろうか。ロケットの周りには見慣れた荒野が広がっていた。空気も、大地も、植物も、故郷の星そのもの。移住可能らしい。私は宇宙開発計画本部に連絡する。
生きるのが辛い。人々が善意を装い僕の心を土足で踏み荒らす。学校をサボり逃げ込んだ図書館で、誰も手に取らない下品な本の中へ吸い込まれた――百年の時を経てその本は突然ベストセラーになった。僕の好きな罵言は美しい言葉と誤解され、ポツりと落ちた読者の涙が茶色い染みになる。
神様は一日に一度涙を流す。悲しいわけでも嬉しいわけでもなくただ同じ時間に涙を流す。神様の涙は地上で雨降りになる。皆はそれを神様の恵みだと言って喜ぶ。喜んで、雨の中、ずぶぬれになって天に踊りを捧げる。水に触れると死んでしまう僕だけが、神様の涙が降ると森へ逃げ隠れる。
夢の中で、目覚めろと、何かが言った。目を開けた。現実で、眠れと、何かが言った。目を閉じた。夢の中で目覚めろと何かが言った。目を開けた。現実で眠れと何かが言った。目を閉じた。ただただ変わりのない覚醒と入眠を繰り返している。今夜もまた眠れと、何かが言った。目を閉じた。
なめくじの神様はかつて塩が大好きで、民草が塩を神社へ供えにくるのを毎日の楽しみにしていた。だが塩分摂取過多で高血圧になってしまい、ドクターストップがかかった。なめくじの神様は悲しみのあまり天に昇った。時々雨がしょっぱいことがある。あれはナメクジの神様の涙なのだ。
ティーカップに夫を入れた。最近仕事の愚痴ばかり。生き抜きでもしたら?カップの中で紅茶に浸かるミニサイズの夫は私の家事にケチをつけ始める。昔乗ったティーカップで、彼はこんな風じゃなかった。何が違うのかしら?ああそうだ、甘味。角砂糖を入れながら取っ手をぐるぐる回した。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「飲み物」、可愛い作品を創作しましょう。補助要素は「乗り物」です
めんこの神様に出会ったのは6歳の時だった。ざくざくとガキ大将にめんこを全部取られて泣いていた僕に、とっておきのワザを教えてくれたのだ。めんこの神様は引退し、その名を引き継いだ僕は今、近所のイマドキな子ども達にめんこを教えている。
目を閉じ、私は深い眠りについた。覚悟はしていた、結局この病の治療法は見つからず、最終的に私は冷凍催眠をされたまま安楽死を施されるのだろう、と。めそめそ泣く声がしてゆっくり目を開けると、すっかり年老いた貴方がごめん、と呟きながら私の手を握っていた。
とうとう地球で最後の有機体になった。一人ぼっちは寂しい。灰化して風になろうと思った。電熱器の上でコロコロ転がる。あっちっち。あっちっち。まだまだ灰にならないな。ならば600℃のマッフル炉へ!

翌日、そこにはいびつな形になった金属の塊が倒れこんでいた。
鞄の中、折り畳み傘は思い出していた。大雨が降った日、帰宅するなり暗い部屋で大泣きした主人。傘はちゃんと仕事をしたのに、主人の顔はびしょ濡れになった。だから、鞄から取り出された折り畳み傘は今日はいい加減な仕事をする。仲直りした主人と恋人が狭い傘の下で肩を寄せ合った。

診断メーカーさんから貰ったお題による
碧さんの本日のお題は「傘」、ほっこりした作品を創作しましょう。補助要素は「恋人」です。
最新式のルンバでも、カーペットの下に潜む旧型掃除機の怨霊を吸い込むことはできない。家主がテストや大事な締め切り前に徹夜を覚悟すると、怨霊はルンバを呪う。家主は真夜中に突然部屋の掃除をしたくなり、そして自滅する。自己嫌悪の心は呪いから解放されたルンバが吸ってくれる。
小学生の頃よく枕の下に入れていた雑誌の切り抜きが出てきた。しわくちゃになっている、昔大好きだったアイドル歌手。夢はあまり見なかったけど。今はおっさんになってるけど。懐かしいなあと思い枕元に置いて寝てみた。色んなものに憧れていた、あの頃の夢を見た。
道端に捨てられた。時代に取り残されたブラウン管。懐かしの砂嵐が吹き荒れる。ざーざー。ざーざー。涙の代わりに乾いた砂が溢れ出す。風に乗り飛んでくよ。ある者は浜辺の仲間に紛れ、ある者は澄んだ川面に浮かび、ある者はスマフォに夢中な若者の口に入りこんでジャリっと言わせる。
気付けばカツカレーの夢ばかりみている。7歳、川原での決闘前。17歳、引退試合の朝。21歳、最終面接の前夜。大事なとき、いつも母はカツカレーを作ってくれた。27歳、プロポーズの前日、これが最後だよ、と食わせてくれたカツカレーの味を、今でもよく夢に見る。
当社が行いました聞き取り調査では、地上に降りた天女の約6割が水浴び中、老夫婦・男性に羽衣を隠されたことがあるそうです。またその4割は帰還の際、涙で羽衣が濡れ帰り辛くなったと答えています。そこで当社の新製品、速乾性に優れたスーパー羽衣!お求めはフリーダイヤル…
ありがとうアルバムを開いた。今まで言ったありがとうが全て綴じられている。子供の頃は色んな人に言いたがってたのに、段々と言えなくなり、そのうち思ってなくても口にするようになった。心からのありがとうは499回言ったらしい。500回目の相手は決まってる。僕は支度をした。





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